記事公開日 2023/06/05
記事公開日 2023/06/05
特養は、費用が安く利用しやすい施設ですが、退去要件に該当すると退去させられる可能性があります。
この記事では、特養から退い出されることになってしまう理由や相談できる窓口、退去後の施設の選び方など、事前に理解しておきたい内容について解説します。
特養から退去を迫られる可能性はゼロではありません。事業者側に正当な理由があると、退去を求められることがあります。
入居前に交わす契約書にはたいてい退去要件が明記されており、もし記載内容に該当する状況になれば施設は正当な退去勧告が可能です。
ただし、多くの施設では猶予期間を設けているため、突然追い出される確率は低いでしょう。
何かトラブルがあっても問題が改善されれば入居を続けられることもありますが、改善が見込めなければ施設は退去勧告をせざるを得ません。
入居前には、契約書に記載された退去要件をよく確認しておく必要があります。
特養への入居前に交わす契約書には、退去要件が明記されていることがほとんどです。施設によって内容は異なりますが、たいていは以下の5つが含まれています。
ここでは、特養に退去勧告される理由について詳しく解説していきます。
特養は、常時介護を必要とする原則要介護3以上の高齢者の支援を目的とした施設です。
2015年4月に介護保険法が改正され、それまで要介護1以上だった入居条件が、原則として要介護3以上となりました。
そのため、入居後に要介護度が下がり要介護2以下になると退去を求められる可能性があります。
ただし、要介護1・2で必ず退去を迫られるわけでなく、2015年4月の介護保険法改正以前に入居した要介護1・2の人は対象外です。
また、特例入所の要件を満たせば入居を継続できるケースもあります。
特例入所の要件は以下の通りです。
上記の要件に当てはまると、要介護1・2でも入居を継続できます。
しかし、特例入所の要件を満たしていない、または要支援1・2になると退去となり、他の施設に移るか自宅に戻るなどしなければなりません。
要介護度が下がりそうであれば、要介護1・2でも入居可能な施設を見つけておきましょう。
特養は入居一時金が不要ですが、月額費用は支払わなくてはなりません。
たとえば、要介護5で自己負担1割の人がユニット型を利用した場合、利用料の目安は下記のとおりです。
費用を支払えずに滞納すると退去を命じられることがあります。要介護度が上がるにつれ利用料金も高額になるので、支払いが滞らないよう注意が必要です。
支払いが困難であれば、居住費がより安い従来型に移る、減免制度を利用するなどの方法があります。詳しくは施設の生活相談員などに相談してみてください。
それでもご本人やご家族が支払えない場合は、連帯保証人や身元引受人が肩代わりすることで入居を継続できます。
ほとんどの施設は長期の入院を退去要件に定めています。一般的には3カ月以上の入院が必要になると、退去を求められることが多いでしょう。
特養には入居待ちしている人も多く、いつまでも空室にはできないからです。また、退院後に必要な医療サポートを施設側が提供できない可能性もあります。
さらに、入居者の家族は入院費に加え、特養の施設利用料を支払わなくてはなりません。経済的な負担が大きく支払いが困難になり、退去に至るケースもあります。
職員や他の入居者への迷惑行為も退去勧告の対象になります。迷惑行為の例は以下の通りです。
認知症の症状が進行すると上記のような行為をしてしまうことがあります。病気の症状による行動なので仕方のないことなのですが、実害が大きいと施設では対応しきれなくなり、退去を求められます。
また、認知症ではなくご本人の気質や過度なストレスが原因で迷惑行為をしているのであれば、一度職員に相談しましょう。
特養に医師が常駐する義務はなく、日々の医療ケアは基本的に看護師が行います。
特養で対応できる医療行為は施設によって異なりますが、たとえば下記が挙げられます。
もし特養で対応できない医療行為が必要になると入居の継続が困難になります。また、必要な医療行為に対応できる施設でも、人数制限や夜間は対応していないというのも珍しくありません。
適切な医療行為が提供できないとなれば、施設は退去を求めざるを得ないでしょう。
退去勧告を受けたら、以下に相談してみましょう。特養退去後の生活に対してアドバイスをもらえます。
退去勧告されたときの相談先についてひとつずつ解説します。
退去勧告を受けたら、まずは入居している施設の管理者と話しましょう。退去に至った理由を詳しく説明してもらい、納得がいくまで話し合ってください。
また、退去までの猶予期間に新しい入居先を探すか、在宅介護に向けての準備が必要です。今後の動きの相談や他の事業者の紹介を受けるなどもしておきましょう。
地域包括支援センターとは、市町村を主体に設置された高齢者のための相談窓口です。生活相談も実施しているため、退去勧告を受けた際に相談してみましょう。
地域包括支援センターには保健師・社会福祉士・主任介護専門職員(主任ケアマネジャー)が在籍しており、退去後の入居先や、在宅介護への移行などをサポートしてくれます。
介護サービス事業者や医療機関とも連携しているので、退去後の生活について適切なアドバイスが得られるでしょう。
特養を退去後に自宅で介護をするなら、居宅介護支援事業所に相談しましょう。
居宅介護支援事業所は、要介護者が自宅で自立した生活ができるようケアプランの作成やサービス調整を行う事業所で、ケアマネジャーが担当します。
ケアマネジャーによる主なサービス内容は以下の通りです。
・利用者や家族への心身の状況や生活環境などのヒアリング
・ケアプランの作成
・定期的な訪問とケアブランの見直し
・介護サービス事業者との連絡調整
・介護保健施設などの紹介
・要介護認定や介護保険に関する手続き代行
特養に入居する前に利用していた居宅介護支援事業所に再び相談するのも良いかもしれません。
施設からの説明を受け、それでも納得がいかないときは以下に相談してみましょう。
退去勧告に不服があるからといって従わずにいると、最悪の場合は訴えられてしまうかもしれません。
できるだけ早く、第三者を間に入れて適切な解決策を提案してもらうのが得策です。
国民健康保険団体連合会とは、介護保険法にもとづいた苦情を受け付ける機関です。
介護サービス利用者や家族から苦情や相談を受け、その内容を審議・調査した上で事業所に指導や助言を行います。
相談することで、退去勧告が正当なものであるか、第三者目線で評価してもらえます。
運営適正化委員会とは、事業者とのトラブルの仲裁や、施設のサービスなどが適切に提供されているかを調査する公正・中立な第三者機関です。社会福祉・法律・医療などの専門家が在籍し、社会福祉法にもとづいています。
相談すると事情調査が行われ、退去勧告が不当であると認められると事業者への申し入れや都道府県知事への通知などが行われます。話し合いによる解決が妥当だと判断された場合は、双方が話し合える場を設けて解決することもあります。
特養を退去して次の施設を探すなら、退去勧告の原因となった問題に対処できる施設を選ぶことが重要です。
以下の点に注意しながら探しましょう。
認知症の症状による迷惑行為が原因で退去に至ったのであれば、重度の認知症に対応できる施設を選ぶ必要があります。施設によって対応できる幅が異なるため、認知症ケアが厚い施設を探してみましょう。
どの程度の症状に対応できるか確認せずに入居すると、同じ理由で退去勧告を受けることになります。入居前に相談しておきましょう。
人工肛門やインスリン投与などは看護師でも対応できる医療措置ですが、必ず提供してもらえるとは限りません。
対応できる医療措置は施設によって異なるため、必要な医療行為に対応できる施設であるか確認しておきましょう。
たとえば、腎臓疾患を患っており人工透析などが必要であれば、以下に対応しているかどうかが判断基準になります。
探し方に困ったら、特養の管理者や地域包括支援センターなどに相談する、もしくは老人ホーム検索サイトでも探せます。
費用が安く終身利用できる特養にも、退去要件があります。要介護2以下になったり、認知症による問題行動があったりすると退去を求められるかもしれません。
もしも退去勧告されたら、特養の管理者や地域包括支援センターに今後の動きを相談しましょう。
特養退去後に入居できる施設を探すときは、原因となった問題に対処できる施設であるかどうかの確認が重要です。
オアシス介護では、医療処置の対応や認知症の入居が可能な施設に絞って検索できます。検索機能を活用し、退去勧告されたときのために新しい施設に目星をつけておくと安心できます。