記事公開日 2023/05/12
記事公開日 2023/05/12
特別養護老人ホーム(特養)は安価な費用で入所できる公的施設です。そのため入所希望者が多く、待機者も多数発生している状況です。
この記事では要介護度・都道府県別の特養の待機者数や、待機期間を短くする方法などについて解説します。
厚生労働省の調査では、2022年4月時点における特養の待機者数は全国で27万5,000人いると報告されています。
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」
特養は複数の施設へ入所の申し込みをすることが可能です。そのままでいけば、1人が2つの特養へ申し込みすると「待機者2人」として数えられますが、この調査ではそういった複数の申し込みをおおむね排除しています。実数に近い数字といえるでしょう。
厚生労働省が公開しているデータを参考に、要介護度別での特養の待機者数を下記にまとめました。
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」
待機者は要介護3~5の方がほとんどで、要介護1・2の方の割合はわずかです。
特養は原則要介護3以上の方を入所の対象としており、要介護1・2の方は特例入所の要件に当てはまらないと入所できません。そのため、要介護3を境に待機者数の割合に差がでやすくなります。
厚生労働省が公開しているデータを参考に、都道府県別の要介護3以上の待機者数を下記にまとめました。
お住まいの都道府県にどのくらいの待機者数がいるのか、参考にしてみてください。
要介護3以上の方の待機者数は東京都がもっとも多く、徳島県がもっとも少ないという結果です。
東京都は65歳以上の人口も全国1位で、2021年時点で約320万人の高齢者が住んでいます。都心部では、高齢者の数に比例して特養の待機者数も多くなっているといえます。
しかし、単純に「都心部だから入所しにくい」とはいえません。高齢者数が多ければ、その分特養の定員数も多いものです。
特養の定員数と待機者数でみた「都道府県別の入所しやすさ」は別の記事でご紹介していますのでぜひご覧ください。
特養の待機者数は、介護老人保健施設(老健)や有料老人ホームなど、他の施設に比べて多い傾向にあります。
特養の待機者数が多い理由には下記が挙げられます。
特養は社会福祉法人や地方公共団体などが運営する公的施設のため、民間が運営する施設と比べてトータルでかかる費用が安い傾向です。
たとえば、民間が運営する介護付き有料老人ホームでは、入居一時金が数百万~数千万円必要なうえ、毎月15万~30万円程度の月額費用がかかります。
一方特養は入居一時金が不要。月額料金は9万~13万円程度と、民間が運営する施設よりも安価です。
さらに、所得の少ない方は減免制度を利用すると、食費や居住費を抑えられます。
特養は生活が困難な方でも入所しやすい施設のため、入所申込者が多くなってしまうのです。
特養の多くが看取りケアに対応しており、終身で利用できます。
看取りケアとは無理な救命措置や延命治療を行わず、自然で安らかな最期を迎えるために必要な見守りや緩和ケアを行うことです。
特養は終身で利用する方が多く、入所期間が3年以上の入所者は全体の38.3%です。
3カ月ごとに退去が判断される老健とは異なり、1人当たりの入所期間が長いため空室が出にくく、待機期間も長くなってしまうのです。
特養では、生活するうえで必要な支援や介護サービスを受けられます。
特養で行っている主なサービスは下記の通りです。
生活するうえで必要な支援があるため、要介護度が高くても安心して暮らせることも特養が人気である理由のひとつです。
ただし、医療ケアの程度は施設により異なります。
特養の待機者数は2022年時点で全国に約27万5,000人いますが、実は年々減少傾向です。
下記は2014年、2019年の待機者数との比較です。
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入居申し込み者の状況」
2019年と比べると5万1,000人、2014年では24万8,000人も減少しています。
特養の待機者数が減少傾向にある理由は下記の通りです。
以下に、特養の待機者数が年々減少傾向にある理由を詳しく解説します。
2015年の介護保険制度改正により、特養の入所要件が「要介護1以上」から「原則要介護3以上」に変更されました。
要介護1・2で特養に入所できるのは入所の必要性が高いと判断された、特例入所の条件に当てはまる方のみです。
特例入所の条件は下記の通りです。
入所要件が厳しくなったことで要介護1・2の申込者が減り、待機者数は大幅に減少しました。
高齢化が進むに伴い、老人ホームの施設数は年々増加しています。
出典:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」「社会福祉施設等調査」
特養だけでなく有料老人ホームやサ高住なども増え、特養は前回の2019年の調査と比較すると299施設、有料老人ホームは1,590施設も増えています。
特養や特養以外にも受け皿が増えたことで、待機者数が徐々に減少しているといえます。
特養は申し込み順に入所できるわけではありません。本人の体調や生活状況、家族の状況などにより判断され、緊急性の高さによって入所の優先順位が決まります。
そのため待機期間は人によってまちまちです。
一般財団法人日本総合研究所による2019年の調査では、入所までにかかった待機期間が3か月未満という方が22.4%いた一方で、3年以上かかった方が9.1%いました。
緊急性が高ければ優先順位が高くなる一方で、緊急性が低いと判断されれば優先順位も低くなり、入所までに数年かかる可能性もあるのです。
特養に緊急性の高さを伝えることで、入所までの待機期間を短くできるかもしれません。
特養は入所待ちをする待機者が多く、また申し込み順に入所できるわけではありません。そのため、人によっては入所までに数年かかる可能性があります。
待機期間を短くするためには、下記の方法を試してみてください。
特養は複数の施設に申し込みできます。
待機者数や居室の空き状況は施設によって異なるため、数カ所の特養に申し込んでおくと早く入所できる可能性があります。
ただし、地域によっては申し込みできる施設数が制限されていることがあります。詳しくは市町村窓口やケアマネジャーに確認してみてください。
もし特養への入所が決まったら、他の特養への申し込みは忘れずに取り消しましょう。
特養は地域によって、待機者数や入所のしやすさが異なります。
待機者は都心部に近いほど多く、反対に地方や郊外は少ない傾向です。しかし、待機者が多くても特養の定員数が多い地域であれば、早く入所できる可能性があるでしょう。
お住いの地域だけでなく、近隣のエリアやゆかりのある地域の特養にも申し込みをしておくと、早く入所できる可能性が高まります。
特養は申し込み順ではなく、緊急性の高さによって入所の順番が決まります。緊急度はご本人の状態はもちろん、介護をする家族の状況も考慮されます。
たとえば、家族に専業主婦(主夫)が同居している家庭は共働きと比べると「介護の手がある」と判断されるため、入所の優先順位が低くなりやすい傾向です。
子どもなどを除いた同居家族全員が仕事をすると、緊急度が上がり待機期間が短くなる可能性が高まります。
特養の入所順位は、特養へ申し込む際に提出する「入所申込書」を元に判断されます。
入所申込書にある特記欄に「緊急度の高さ」や「在宅介護の継続が厳しい理由」などを詳細に記入することで緊急性がアピールできます。特記欄は空欄のまま提出するのではなく、具体的に記載しましょう。
もし特記欄に記入する内容がおさまらないときは、別紙への記載がおすすめです。
ただし、別紙を受け付けていない自治体や特養もあるため、希望する場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
特養に入所の申し込みをしたあとも、要介護度や経済状況、家族の状況などに変化があったら細かく報告してください。
申し込み後に施設側から待機者の近況を尋ねることはなく、入所の順番が近づいた時点で連絡を入れるのが一般的です。
本人や家族の変化を逐一報告することで、緊急性が上がり入所の順番が早くなる可能性があります。
2022年4月時点における特養の待機者数は全国で約27万5,000人です。
特養の入所要件が厳しくなったとともに特養やその他の老人ホームが増えたことで、待機者数は年々減少傾向にあります。
しかし、現在でも入所待ちが必要なことには変わりありません。入所の優先順位は緊急度によって決まるため、早く申し込んでも入所まで数年かかることもあります。
できるだけ早く入居するには、複数の特養に申し込む、申し込むエリアを広げるなどを実践するとよいでしょう。
オアシス介護では全国の特養を掲載しています。エリアや対応可能な医療処置などで絞り込めますので、特養を探す際にはぜひご活用ください。