記事公開日 2023/05/17
記事公開日 2023/05/17
特養への入居は原則要介護3以上ですが、要介護1・2でも特例で入居できるケースがあります。
この記事では、特養の入居条件や実際に入居する方の平均要介護度、要介護度による費用の違いなどを解説します。
特養とは特別養護老人ホームの略称で、在宅での生活が難しい高齢者のための入居施設です。
必要な介護サービスを24時間受けられるため、常時介護が必要な方でも安心して入居できます。社会福祉法人や地方公共団体などが運営しており、民間の老人ホームより費用が安い傾向です。
特養は24時間の介護を受けられるうえに費用が安いことから、非常に人気があります。そのため入居希望者が多く、入居までに待機期間が発生してしまうことがほとんどです。
特養の入居対象者は原則要介護3以上の方です。65歳以上の高齢者だけでなく、特定疾病を認められた40~64歳の方も対象となります。
また、要介護1・2の方もやむを得ない事情と認められれば特例で入所できます。
ここでは、特養に入居できる要介護3の状態や、要介護1・2でも入居できるケースについて解説します。
介護度は介護を必要とする度合いにより、要支援1・2、要介護1~5の7段階に区分されます。要介護5がもっとも重度で介護の手間がかかる状態です。
要介護3は食事や入浴などの日常動作を行う能力が著しく低下しており、ほぼ全面的な介護が必要です。具体的には下記のような状態により支援を必要とします。
高齢者1人では日常生活が困難で介護する家族の負担も大きいため、要介護3は特養に入居できる介護度となります。
現時点で要介護3未満でも、再認定により介護度が上がる可能性があります。前回の認定調査の時点と比べて状態が悪化しているなどあれば、一度担当のケアマネジャーに相談してみましょう。
2015年の介護保険法改正により、特養の入居条件は要介護1以上から要介護3以上に変わりました。
ただし、やむを得ない事情があれば要介護1・2でも特例として入居を認められます。
具体的な要件は下記の通りです。
上記の要件に当てはまれば、要介護1・2でも特養に入居できるかもしれません。詳しくは担当のケアマネジャーや市町村の窓口などに相談してみてください。
要支援1・2は特養に入居できません。
要支援は、日常生活上の基本的な動作はほぼ1人でできるものの、部分的に支援が必要な状態です。
特養は日常生活が困難で在宅での生活が難しい人のための施設であるため、日常生活がほぼ1人で行える方は対象外です。
厚生労働省の資料によると、2020年時点の特養入居者の平均要介護度は3.96です。
2015年に介護保険法が改正されてからは、原則要介護1と2の方を受け入れていないため、要介護3以上の割合が増えています。
以下は特養入居者の要介護度の変化を2015年と2020年で比較したものです。
出典:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進(参考資料)」
特養に入居すると、居住費や施設介護サービス費、食費などの費用が毎月かかります。
このなかで要介護度により費用が異なるのは施設介護サービス費です。従来型・ユニット型別の月額の施設介護サービス費を下記にまとめました。
特養の入居条件は原則として要介護3以上ですが、一部特例として要介護1・2の方の入居が認められるため、要介護1~5の金額を記載しています。
なお、施設介護サービス費は自己負担1割、1カ月30日、1単位10円として計算しています。
従来型多床室・個室の施設介護サービス費(月額)
ユニット型個室・個室的多床室の施設介護サービス費(月額)
従来型の多床室ではひとつの部屋を2〜4人で、個室は1人で使用します。病院の病室をイメージすると分かりやすいかもしれません。
ユニット型個室は10名程度を1ユニットとし、入居者一人ひとりに個室があります。個室的多床室も同じようなユニットですが、大部屋を簡易的な壁などで仕切っているという違いがあります。
費用は従来型が安くユニット型が高めです。従来型は多数の介護スタッフが多数の入居者をケアしますが、ユニット型はユニットごとに専任の職員が配置され、きめ細やかなケアが期待できます。
施設介護サービス費の違いは、ケア方法や職員の人員配置の違いといえるでしょう。
費用を抑えたいのであれば、従来型がおすすめです。
特養の入居条件は原則要介護3以上で、要介護1・2の方も条件に当てはまれば特例入所が認められます。
入居中は、例えば要介護4から要介護3に下がっても問題ありませんが、要介護2以下になると退去を求められるかもしれません。
もし退去となれば、自宅で介護するのか他の施設に入居するのかなどの検討が必要になります。どちらにしても準備が必要になるため、要介護度が改善しそうな場合は早めに他の施設に目星をつけるなどしておくと安心です。
ただし要介護1や2まで要介護度が下がったとしても、特例入所の条件を満たしていれば入居を継続できるでしょう。
もし要介護度が下がって特養からの退去が必要となったら、新たにどの施設を選ぶべきか悩んでしまいます。
要介護1・2で入居できる施設は主に以下です。特徴を紹介するので参考にしてみてください。
介護付き有料老人ホームは民間の入居施設です。生活支援や24時間体制の介護サービスを受けられるため、要介護度が高い方も入居できます。
レクリエーションやリハビリにより、身体機能の維持・回復も目指せるでしょう。
介護付き有料老人ホームの入居条件は施設によって異なります。
・自立~要介護5
自立から要介護5まで幅広く受け入れている施設も多くあります。ただし、必要な医療ケアや重度の認知症に対応していない施設もあります。心配であれば事前に問い合わせておきましょう。
住宅型有料老人ホームは介護度の低い高齢者の入居を想定した施設です。
食事の提供などはありますが、施設による介護サービスはありません。介護サービスが必要であれば、外部の介護事業所と契約する必要があります。
住宅型有料老人ホームの入居条件は施設によって異なります。
・自立~要介護5
自立から要介護5の方まで入居できますが、実際に入居できる介護度は施設により異なります。
夜間の介護や医療ケアが必要な方は入居できない可能性がありますので、事前に施設に確認しておきましょう。
サ高住とは、安否確認や生活相談など高齢者向けのサービスが付いた住宅です。
有料老人ホームのような利用権方式ではなく、賃貸借方式で契約するサ高住が多いため、気軽に契約しやすい傾向です。
浴室付き、キッチン付きの居室もあるなど、自宅のように自由な生活が送れる点も特徴でしょう。
サ高住の入居条件は以下の通りです。
・自立~要介護5
原則60歳以上の方が対象ですが、要支援・要介護の認定を受けた60歳未満の方も入居可能です。
サ高住は住宅型有料老人ホームと同様に介護サービスの提供がありません。必要な場合は外部の介護事業者と契約します。
ただし一部のサ高住では介護サービスを提供しています。介護の必要性が高ければ「介護型」のサ高住を選択してもよいでしょう。
グループホームとは、認知症の高齢者が専門スタッフの支援のもと、小規模の集団で生活を送る施設です。
少人数で自立した集団生活を送り、認知症の進行を抑えるのが施設の目的です。料理や洗濯などの家事はできる限り自分で行い、スタッフはできない部分をサポートします。
特養の入居条件を満たしていないけれど認知症の症状がある方に適しています。
認知症の方向けのグループホームの入居条件は以下の通りです。
・要支援2~要介護5
・医師により認知症の診断を受けている
・入居施設と同一地域内に住民票がある
65歳以上かつ要支援2以上で、認知症の診断を受けた方が対象です。ただし、40〜64歳の方でも若年性認知症であれば入居できます。
グループホームは地域密着型のサービスとなるため、住民票のある地域に設置された施設でなければ入居できません。探す際には注意しましょう。
要介護1・2で特養の入居条件に当てはまらなかったり、要介護度が下がって特養からの退去が必要になったら、他の施設への入居か在宅介護が選択肢となります。
もし有料老人ホームなどが見つからなければ、ショートステイを活用しましょう。ショートステイは特養などが運営しています。
在宅介護ではデイサービスや訪問介護も便利なサービスですが、ショートステイは利用者が宿泊して介護サービスを受けられるため、家族の介護負担も軽減できます。
利用は要介護1以上で、要支援者は介護予防短期入所生活介護を利用できます。
最短1日から利用でき、連続利用日数は30日が上限です。30日を超えて利用はできないため、続けて利用したい際には一度自宅に帰らなければなりません。
在宅介護をするなら、ショートステイはぜひ活用したいサービスです。
特養の入居条件は原則65歳以上で要介護3以上の方です。
入居者の平均要介護度は3.96と高く、主に在宅での生活が困難な高齢者が入居しています。
要介護1・2の方も条件に当てはまれば入居可能です。要支援者は在宅での生活が困難とはいえない状態のため、対象外となります。
特養の入居条件に当てはまらないけれど老人ホームを探したいという方は、有料老人ホームやサ高住なども選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
オアシス介護では地域や費用などの条件から施設を検索できますので、ぜひ活用してみてください。