記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
高齢者が暮らせる施設や住宅、そのひとつがシニア向け分譲マンションです。
シニア向け分譲マンションは、介護サービスの提供がある特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホーム、認知症を持つ高齢者が入居できるグループホームなどとは異なり、文字通り「シニアのための分譲マンション」となります。
シニア向け分譲マンションとはどんな住宅なのか、詳しく見ていきましょう。
シニア向け分譲マンションは、主に民間が運営してる「シニアのためのマンション」を広義に総称したものです。
同じように住居としての性質が強いサービス付き高齢者向け住宅には、見守りや生活相談のサービスが義務付けられていますが、シニア向け分譲マンションは明確な基準が決まっていません。
そのため、すべてのシニア向け分譲マンションに同じ条件が当てはまるわけではありませんが、主な傾向をつかんでいきましょう。
シニア向け分譲マンションが他の高齢者施設・住宅と大きく異なる点のひとつが「居室に対する権利」です。
有料老人ホームでは終身に渡って住むことができる権利を得られることも多いですが、契約を交わした本人以外が住むことはできませんし、亡くなったあとに子どもなどに譲渡することもできません。
サービス付き高齢者向け住宅の場合は賃貸契約になるため、毎月の家賃を支払った期間のみ住み続けることができ、居住する居室が入居者のものになるわけではありません。
一方で、シニア向け分譲マンションは通常のマンションと同じように購入し、所有権を得ることができます。そのため資産にすることができるのが大きな特徴で、譲渡や売却、賃貸、相続も可能です。
シニア向け分譲マンションは法律で定められた施設ではないため、設備や部屋の広さに基準はなく、マンションによりさまざまです。
住居の広さは1LDK~3LDKなどと選択に幅があり、単身で住むのか夫婦なのか、または使い勝手によって部屋の広さを選択することができます。
間取りはマンションごとに異なりますが、トイレや浴室、キッチン、洗濯機置き場、収納などが備わっており、通常のマンションと同じように自分で家事などをしながら暮らすことができます。
居室や共有スペースは基本的にバリアフリーで、支援が必要になったときや車椅子であっても移動しやすいつくりです。
なかには緊急通報装置や人感センサー防犯設備などが整っているシニア向け分譲マンションもあります。
このようなシステムの設置があれば、「突然の病気やケガが心配」「泥棒に入られたらどうしよう」といった不安があったとしても、大きな安心感につながります。
また、シニア向け分譲マンションは、自立した生活を楽しみたい入居者が多い住宅です。そのため、多くのマンションでは共有設備が充実しています。
家族が遊びにきたときに宿泊できるゲストルームがあったり、広々としたエントランスに、レストラン、娯楽室、シアタールーム、大浴場、スポーツジム、フィットネス、趣味の工房、図書室、カラオケルームなどを備えた高級マンションもあります。
このような設備が整っていれば、毎日を楽しく健康的に過ごせるだけでなく、介護予防にもなります。マンション内の住人同士でつながりもでき、年代の近い友人もできやすくなるでしょう。
これらは、シニアにとっての生きがいにもなり、精神面にもよい影響があるといえそうです。
多くのシニア向け分譲マンションでは専属スタッフやコンシェルジュを設けており、以下のようなサービスが受けられます。
・宅配便やクリーニングの受け渡しなどのフロントサービス
・安否確認などの見守り
・洗濯、掃除などの日常生活のサポート
・病院などへの送迎バス等の運行
・緊急時の対応
フロントサービスでは、宅配便やクリーニングの受け渡しといった内容のほか、来訪者の受付、共用スペースやマンション内で行っている活動の予約対応、オプションサービスの相談、暮らしのサポートなどが受けられます。
見守りサービスでは居住者への安否確認が行われるため、一人暮らしの高齢者であっても安心です。体調に著しい変化があった場合には、家族へ連絡をとってくれることもあります。
また、緊急時対応サービスでは、体調に変化が見られて緊急を要する場合に、救急車の手配やかかりつけ医へ連絡をしてくれます。
オプションサービスは、よくあるサービスとして掃除・洗濯のサービスや、外出時のサポートなどがあります。
シニア向け分譲マンションのオプションサービスについては、専属スタッフにいつでも気軽に相談きることが多いので、そのときの健康状態にあわせるなどして、サービスの利用を検討しましょう。
また食事に関しては、マンション内にレストランを備え、利用したぶんだけの料金を支払うことがほとんどです。体調が悪いときなどは、部屋まで料理を届けてくれるサービスなどもあります。
部屋にはキッチンも備わっているため、入居者本人が料理を作ることもできますし、外食に出掛けることも可能です。
併設のレストラン、外食、自炊などを自由に組み合わせて、入居者それぞれのスタイルで楽しむことができます。
ここで紹介したサービスは、すべてのシニア向け分譲マンションで提供しているわけではありません。詳細は必ず各マンションに確認するようにしてください。
シニア向け分譲マンションは介護施設ではないため、身体介護には対応していません。介護サービスが必要となった場合は在宅介護と同じように介護事業所を探すこととなります。
なかには、マンション内にデイサービスや訪問介護ステーションが併設されいることもあり便利ですが、他に利用したい事業所があれば自由に選ぶことも可能です。
医療に関しても医師が常駐しているようなことはないため、治療などが必要な場合はかかりつけのクリニックに通うか、往診などに来てもらう、または訪問看護といったサービスを利用することになります。
マンションによっては、看護師が常駐している場合もあります。見守りや健康相談、急病の際の対応などを行なってくれることもあり、特に一人暮らしであれば安心できそうです。
また、クリニックに関してもマンションに併設されていることがあり、そのような建物であれば、すぐに対応してほしいことがあったときには安心です。医療機関と提携しているシニア向け分譲マンションもあります。
シニア向け分譲マンションの入居条件には一定の決まりがないため、そのマンションによって異なります。
年齢は50歳以上であったり60歳以上であるなど、いわゆる「シニア」といわれる年代が対象で、夫婦での入居や親子での入居も可能なことがほとんどです。
要介護度に関しても決まりがなく、それぞれのマンションで設定しています。重度の要介護度でも入居が可能なこともありますが、シニア向け分譲マンションには介護サービスがついているわけではないので、通常の在宅介護と同様に同居人や介護サービスによる常時の介護が必要になってきます。
そのため、要介護度が高くなると他の介護施設に住み替える必要が出てくる可能性もあります。
要介護度が高くなるとせっかくの充実した設備も利用しにくくなりますし、基本的には身の回りのことを自分で行える方が入居の対象だと考えておいたほうがよいでしょう。
また、認知症と診断されていると入居できない場合もあります。
シニア向け分譲マンションの購入には、基本的に一般的な分譲マンションと同様の費用項目が発生しますが、物件によってさまざまです。
付帯設備・サービスがある分、一般的なマンションよりも高額になります。
購入価格の相場は数千万~1億円以上と金額の幅は広いですが、この差は、通常のマンションと同じように地価であったり、部屋の広さ、設備の充実具合などによるものです。
また常に新築とは限らないため、中古物件はそのぶん安くなります。購入価格が高額のため購入が難しいという場合でも、中古であればおよそ1,000万円程度から販売されており、若干手が届きやすくなります。
物件の購入金額以外でかかる費用としては、仲介手数料や登記費用などが別途必要です。
それらのほかには、月額の管理費や修繕積立金が5~20万円ほどかかり、掃除・洗濯やその他のオプションサービスを利用した場合には、それらの利用料もかかります。
介護が必要になれば、別途介護保険サービスや医療費などの費用も発生するため、資金に余裕があるシニア向けの物件ともいえます。
老後の生活資金や介護費用なども考慮して、購入できる価格帯を決めるとよいでしょう。
シニア向け分譲マンションを購入するときには、住宅ローンを利用することができます。
「返済完了時の年齢設定は80歳まで」といった条件があることもありますが、50代・60代であっても借り入れが可能な場合もあります。銀行によって条件は異なるので、詳しくは各銀行に相談してみてください。
ただし、高齢になってからのローンは返済が大変です。給与やもらえる年金などの収入、資産、それにローン返済額や管理費などの出費がどのくらいになるのか、しっかりシュミレーションしておきましょう。
無理が出るようであれば、有料老人ホームや賃貸で契約できるサービス付き高齢者向け住宅などを入居の候補にいれてもよいかもしれません。
有料老人ホームでは入居にあたって権利形態が「利用権」であるのに対し、シニア向け分譲マンションは「所有権」となるため、購入するとそれが資産となります。
有料老人ホームは何年も住むとトータルで数千万~数億円かかることもありますが、退去すれば特に何も残らない一方で、シニア向け分譲マンションであれば、同じくらいの費用をかけたとしても資産にすることができます。
必要なくなれば売却することも可能です。
どちらも安くない買物なのであれば、資産になるシニア向け分譲マンションは大きなメリットであるといえるでしょう。
シニア向け分譲マンションは、身の回りのことを自分でできるシニアが自由に生活できるマンションです。
ある程度の縛りがある老人ホームとは違い、あくまでも自宅として趣味を楽しみながら生活したり、いつでも外出や外泊ができます。そのため、よりアクティブな毎日を送ることも可能です。
また、スポーツジムやプール、娯楽のための設備が充実したシニア向け分譲マンションであれば、雨の日でも建物内で気軽に楽しめます。
そこには同年代の入居者もいるため、近い世代とのご近所付き合いもしやすくなり、より楽しみも増えるでしょう。
部屋を自由にレイアウトしたりリフォームできることも魅力です。
老人ホームでは居室を利用するときの自由度が低いですが、シニア向け分譲マンションであれば、好きな壁紙に変えたり、自分好みの家具をそろえて好きに配置することも可能です。
自由に生活をするだけであれば、通常のマンションや一軒家でも可能です。高齢になると、突然の病気や万一のことが心配になります。
緊急通報装置があるなど、自由に生活しながらも適度に見守ってもらえるのがシニア向け分譲マンションの魅力でしょう。
洗濯や掃除、外出への付き添いなどといった便利なオプションサービスを備えているシニア向け分譲マンションもあるので、忙しい日や身体が不自由になったときにも安心です。
シニア向け分譲マンションを購入した場合の権利形態は「所有権」であり、法律の上では一般のマンションと同じ扱いです。住まいとして必要なくなれば売却したり賃貸物件とすることができる不動産物件です。
所有者が死亡した場合には、遺産として家族に相続することもできます。相続した子どもはそこに転居も可能です。
ただし誰も住んでいない期間があっても、売却や賃貸が決まるまでの管理費などは払い続ける必要がありますので、注意しておきましょう。
バリアフリーで設備やサービスも整っているシニア向け分譲マンションは、高齢者の住まいとして良質です。しかし、なかなか購入に踏み切れない理由が「通常のマンションに比べて高額な費用」という方も少なくありません。
シニア向け分譲マンションは管理費も安くはないため、資金にある程度の余裕が持てるシニアにとって選択肢となりやすい住宅といえるでしょう。
シニア向け分譲マンションは施設ではないため、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームのような介護や医療ケアのサービスはありません。
入居したときは身のまわりのことを自分で行える自立状態であっても、加齢や病気などにより介護が必要となる可能性は、誰であってもゼロではありません。支援が必要となった場合には、介護サービスを利用することになります。
それでも要介護度が低いうちは、訪問介護などを利用して暮らし続けることができますが、要介護度が高くなった場合には老人ホームへの住み替えを検討する必要が出てきます。一人暮らしであればなおさらでしょう。
その際、マンションを所有したままだと管理費や修繕積立金、固定資産税などを支払い続けなければなりません。
シニア向け分譲マンションの売却や譲渡・相続・賃貸を検討する場合、「入居者の年齢制限」に注意が必要です。
入居対象者に「50歳以上」「60歳以上」などと制限を設けているマンションが多く、譲渡や相続、賃貸の対象者がその年齢に達していないとできないからです。
シニア向け分譲マンションは、物件数がそれほど多くなく、中古市場がまだ確立されていないといわれています。そのため、思うように売却できない可能性もあります。
購入を検討する際は、住み続けられなくなるときのことも想定し、信頼のおける不動産業者などに売却や相続、賃貸などの可能性について相談しておくとよいでしょう。
シニア向け分譲マンションは、老人ホームとは異なる住居です。
コンシュルジュが常駐したり便利なオプションサービスがあるなど、高齢者が安心して暮らせる住まいですが、介護サービスはついていないため、重度の要介護度になれば老人ホームに住み替える必要も出てくるかもしれません。
しかし、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などとは違い、マンションを購入することで資産にすることができます。そのため、売却や賃貸、相続も可能です。これは大きなメリットでしょう。
また、カラオケやスポーツジムといった設備が備わっていることも多く、充実した毎日を送ることができます。
ただし、シニア向け分譲マンションの購入金額は決して安くありません。月々の管理費などもかかるため、しっかりと予算を組んで購入を検討しましょう。