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埼玉県の特徴と老人ホーム・介護施設の現状
都市と地方の融合が魅力の埼玉県
広大な関東平野と利根川、そして雄大な秩父山地。埼玉県には魅力あふれる景観がたっぷりあります。また、2000年に「街開き」が行われたさいたま新都心には、未来都市の趣もあります。大都市と自然、この両者が高いレベルで調和しているのが埼玉県です。
2023年7月現在の推計人口は、約733万人です。これは、都道府県別で東京都、神奈川県、大阪府、愛知県につぐ第5位となります。面積は3,800平方キロメートル弱で、狭いほうから数えて9番目です。このため、人口密度は愛知県を抜いて第4位となります。人口の密度は、都市としての魅力を裏付けるものともいえるでしょう。
埼玉県の地理的な特徴として最大のものは、海に面していないことです。さらに、県の形は、東西に長くなっています。隣接する主な都県は、北側の群馬県、南側の東京都、東側の千葉県が挙げられます。この他にも、秩父山地を隔てて長野県および山梨県とも隣接していますし、北東部では茨城県や栃木県とも接しています。
埼玉県の交通網は抜群の利便性
交通の利便性の良さは、老人ホーム探しでも重要なポイントです。鉄道やバスでの移動のしやすさ、一般道路や高速道路の充実具合、渋滞の有無などによって、家族が面会に行きやすいかどうかが変わります。行きにくい老人ホームでは、まめに面会に訪れるのが困難なことはもちろん、徐々に足が遠のいてしまうかもしれません。
では埼玉県の交通事情はどのようになっているのでしょうか。
埼玉県の鉄道網は、南北方向になる東京との連絡を中心に大きく発達しています。大きな特色は、地域により東京側のターミナルが違うところです。
春日部市など、県の東部では東武伊勢崎線により浅草や押上につながっています。さいたま市を中心としたエリアからは、JR線が上野、東京、新宿などへと向かいます。川越市を中心としたエリアからは東武東上線で池袋、渋谷などと直結していますし、所沢を中心としたエリアからは、西武線が池袋、新宿へと向かっています。
それぞれの路線は、各ターミナル止まりではなく、東京都心部では地下鉄線などに乗り入れており、県南部からは、首都圏内のどこに行くにも便利です。東西のつながりが弱いのは、首都圏で共通するところですが、JR武蔵野線あるいは川越線、東武野田線、西武新宿線などが、その役割を担っています。
東京都内で希望に合う老人ホームが見つからなかった都民にとっては、埼玉県の施設を探すという選択もしやすい環境といえます。
新幹線も、東北系統と上越・北陸系統が通っており、大宮駅には2015年以降、全列車が停車するようになりました。埼玉県は、東北あるいは信越、北陸地方から見れば扇の要です。なかでも大宮は玄関口と言ってもよく、東日本各地とのアクセスは抜群です。このように、鉄道のネットワークは、よく整備されています。
道路網も、特に高速道路・高規格道路はよく整備されています。東北道や関越道など、日本の大動脈ともいえる高速道路が、県を南北に貫いています。外環道あるいは圏央道といった環状路線の整備も進んでいますから、日本全国との往来は問題ないでしょう。
ただし、一般道については、人口の増加に整備がおいついていない面は否定できません。これは首都圏各地共通の課題ですが、交通集中による渋滞は頻発しますので、県南部では自家用車を持つか、公共交通を活用するかはライフスタイルにより選択する必要があるでしょう。ただし、県北部はやや人口が少なくなり、自家用車の必要性は大きくなります。
豊富な選択肢がある埼玉県の有料老人ホーム
埼玉県が示している資料によると、2018年3月現在の有料老人ホームの施設数は384です。こちらは政令指定都市であるさいたま市を除いた数字で、さいたま市には2018年4月現在、141施設があります。集計時期に1ヶ月の差がありますので厳密な数字ではありませんが、有料老人ホームの合計は525施設前後といえます。
参考までに、2018年2月時点の東京都、同年3月の神奈川県とも、有料老人ホーム数は817です。ゆえに、施設数だけで見ると、埼玉県の有料老人ホームはやや少ないという印象を持たれるかも知れません。
ただし、神奈川県は老後の居住地としても人気の高いエリアで、人口に比較して有料老人ホームの施設数が非常に多い県です。東京都には、そもそも埼玉県の人口の倍近くの1,375万人(2018年2月時点)が住んでいます。施設数と人口の比でいえば、埼玉県のほうが、東京都より選択肢は多いと見ることもできます。
ついで、地域ごとの事情を見てみましょう。埼玉県もいくつかの地域に分けられますが、まず県庁所在地であり、130万人近い人口を抱えるさいたま市では、141の有料老人ホームがあります。密度はかなり高いといえるでしょう。
その他の地域にも、多数の有料老人ホームが立地しています。600万人ほどの人口に384施設ですから、さいたま市ほどの密度はありませんが、施設数対人口比では、東京都全体のそれを大きく上回っています。
施設の分布も南部に偏っているわけではなく、北部にある熊谷市、深谷市、本庄市あたりには、かなり多くの有料老人ホームがあります。県北部で群馬県に接する児玉郡神川町は、人口1万5千人に満たない小さな町ですが、5つの住宅型有料老人ホームがあります。
北部は住宅型有料老人ホームが多い傾向です。これに対し南部では、介護付き有料老人ホームの比率が高くなります。ニーズにあわせて、選択するといいでしょう。
また、埼玉県の有料老人ホームは、入居時の費用や月額の費用が、都内に比較して低いことも特徴的といえそうです。
埼玉県は首都圏内では寒暖の差が大きいこともあり、温暖な千葉県南部などと比較して、敬遠される傾向があります。しかし、豊かな自然に囲まれ、はっきりした四季の移ろいを感じながら過ごすことができます。全県的に、対東京での利便性は高いことが埼玉県の特長ですから、埼玉県民はもちろんですが、東京都民であっても終の住処候補として、選択肢に挙げてみてもいいでしょう。
埼玉県の特別養護老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅
特別養護老人ホーム(特養)についても、見てみましょう。2018年4月時点で、全県で467の特養があります。ただし、同じ敷地内にあっても、在来型とユニット型を併設している施設については、2施設とカウントしていますので、施設のある場所は408となります。定員合計は、35,361人となります。
神奈川県と比較してみましょう。神奈川県の特別養護老人ホームの施設数は397で、定員は35,856人です。いずれも、大きな差はありません。埼玉県より人口が多い神奈川県とほぼ同等ということは、特養については、神奈川県に比較して埼玉県の整備状況は進んでいると見ていいことになります。
なお、埼玉県の特別養護老人ホームでは、ユニット型の定員が全体の56.5%を占めます。施設定員の中にユニット型か多床室を主とした在来型かを明示している県は多くないのですが、数値を明示している神奈川県で46.1%、千葉県では46.2%です。埼玉県では、10ポイントほど大きいことがわかりますが、これはかなり高い数値と考えていいでしょう。
新しく開設される特養は、すべてユニット型です。また、多床室を主とした在来型施設から、ユニット型施設への転換は、そうは進んでいません。この比率は、近年における特養整備状況の目安になります。埼玉県での特別養護老人ホームの整備は、比較的よく進んでいると考えることができます。
また、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)についても、開設が増えています。現状では、東京との往来が便利で、人口が集中する県南部での立地が中心ですが、北部地域にも相当数の施設があります。賃貸で入居するサ高住は短期間のみの利用も可能なので、ニーズに併せて入居を検討してもいいでしょう。
埼玉県における高齢化の状況
埼玉県は若い県であると言われています。事実、高齢化率は全国平均より低く推移しています。2000年の高齢化率は12.8%で、全国平均の17.4%より4.6ポイント低く、若い県であったことを裏付けています。2015年には埼玉県が24.8%、全国平均は26.6%となり、差は1.8ポイントにまで詰まっています。
このことは、21世紀に入ってからの埼玉県では、高齢化の進展がかなり速かったことを意味します。2018年度から実施された「第7期埼玉県高齢者支援計画」には、「高齢化のスピードは全国一」という記述もあります。この急激な差の縮小は、進学就職などで首都圏に移住した団塊世代たちのかなりの部分が、埼玉県に居を構え、住み続けていることを示唆しています。
推計となりますが、2045年の埼玉県の高齢化率は35.8%です。全国平均は36.8%と予想されており、全国平均よりは低いものの、その差は1.0ポイントまでに縮小します。首都圏への人口流入は、その後も止まらないと見込まれています。
一方で、埼玉県の人口は、2021年にピークを迎えたあと、徐々に減少しつつあります。ただし、2010年の国勢調査をもとに行われた推計では、2035年の県人口は656万人であるのに対し、2015年の国勢調査をもとに行われた推計では689万人と、減少の幅が小さくなっています。
少子高齢化への対応は、国レベルの政策、県や市町村レベルでの政策があります。5年で県人口の減少幅が33万人も小さくなったことは、大きな意味を持ちます。この数字を見る限りでは、埼玉県では、少子高齢化の政策が機能しつつある、そう考えてよさそうです。
埼玉県の要介護認定者数と高齢化対策
人口の減少傾向が軟化する兆しもある埼玉県ですが、それでも急速な高齢化は進行し、それに伴い要介護者も増えています。2021年6月現在では、埼玉県の要介護認定者は約32.1万人です。9年前の2012年1月の要介護認定者数は約21万人。約11.1万人の増加です。高齢化が進んでいることから、要介護の高齢者が増えていることがわかります。
それらの対策として、高齢者への福祉や医療サービスのフットワークを軽くするため、県内に10の圏域を設定しています。これは老人福祉圏域と呼ばれ、二次保健医療圏と同じエリア分けがされています。圏域分けは、さいたま市で1圏域、その他は東京中心の鉄道網ごとに生活面での関係性が高い市町村の組み合わせなどとなっています。
この圏域分けの他に、地域包括支援センターのネットワークを構築することも行われています。こちらは、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることができるようにするための仕組みで、市町村よりさらに細かいレベルでの対応を可能にするものです。
さらには、高齢者の社会活動の活発化や、職業訓練など、就労環境の整備といった対策も行われています。高齢者に区分される年齢であっても、自立した人も数多いですから、そういう人たちには「ささえる」側に回ってもらおうという工夫です。
このことは、必然的に健康寿命の延伸にもつながりますし、介護予防の観点からも有効です。
また、県北部や西部といった比較的人口が少ない地域でも、中規模のよく整備された都市が埼玉県にはあります。都市だけではなく、豊かな自然も持ち合わせています。
自分らしい暮らしを、続けたい。実現のハードルは高いのですが、大切なことです。こういった希望を、かなえやすいエリアと言えるのかもしれません。
暮らしやすく、美しい四季のある埼玉県
埼玉県は、関東地方の中央部から南よりに位置しています。日本国内でも比較的温暖な関東地方に位置しますので、気候は、東京に近いと考えていいでしょう。
ポイントは内陸県だということです。つまり、寒暖の差が少し大きくなります。埼玉県の気候と聞いて、真っ先に思い浮かぶのはおそらく「暑い」というイメージでしょう。事実、真夏などに国内で最高の気温を記録したと報じられることが多いのは、岐阜県の多治見市、群馬県の館林市などと並び、埼玉県北部の中心都市となる熊谷市です。
この暑さはイメージ通りで、県南部は北部ほどではありませんが、ヒートアイランド現象の影響を受けて熱くなります。山間部にあって標高の高い秩父市方面も、朝晩はある程度しのぎやすいとはいえ、昼間はかなり気温が上がります。
反面、首都圏内としては、冬場は寒いといえます。県内各地とも、最低気温が氷点下となる冬日を記録する日が多くなります。とはいえ、太平洋側の気候ですから、県内各地とも冬場は晴れる日が多く、日中の最高気温も、多くの場合10度程度までには上がりますので、過ごしにくいということはありません。
夏暑く、冬寒い。このことは、日本の特徴でもある、はっきりとした四季が存在することを意味します。県のキャッチフレーズ「彩の国埼玉」の通り、季節の息遣いを感じながら、日々を過ごすことができるのが、埼玉県の魅力でしょう。