記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
たくさんの人が生活を共にする老人ホームでは、多かれ少なかれ人間関係のトラブルがあります。そのため、施設の利用を検討している家族のなかには、自分の親や配偶者がトラブルに巻き込まれないか、心配になってしまう人も多いのではないでしょうか。
老人ホームではどのような人間関係のトラブルが起こり得るのか、トラブルが起きたときはどう対処すればよいのか、さらにトラブルを未然に防ぐために有効な方法などを解説します。
老人ホームで起きる人間関係のトラブルはさまざまです。いくつか例に挙げていきます。
施設内でのトラブルには、まずテレビやラジオの音が大きいなど、音が原因になる騒音問題があります。高齢になると耳が遠くなる人も多く、聞こえづらくなるため無意識にテレビやラジオのボリュームを上げてしまいがちです。
また、耳が遠い人は自分の声も同様に聞こえにくくなるので、結果的に話し声も大きくなってしまいます。そのため、本人に自覚のないまま周囲の人から「うるさい!」と言われるようなトラブルに発展するのです。
たくさんの人が集まるところで避けられないのが、相性による人間関係のトラブルです。
人には性格や相性の合う、合わないがあります。これは高齢になっても同じで、なかには相性の悪い入居者に対して無視をしたり陰口をたたいたり、さらには喧嘩を仕掛けたりする人もいます。
きっかけはほんの些細なことでも、気がついたら大きなトラブルになってしまったというケースもあるのです。
認知症を持つ人による暴力や暴言がトラブルにつながる場合もあります。これは老人ホーム特有のトラブルといえるかもしれません。
認知症の進行具合にもよりますが、認知症を持つ人から理不尽に暴力を受けたり暴言を吐かれたりするケースもあります。
認知症という病気がさせていることだと頭では理解しながらも、トラブルに巻き込まれた当事者の立場としては「病気だから仕方ない」と簡単に割り切れる問題でもないため、難しいケースといえるでしょう。
有料老人ホームには各居室に鍵がついているところも多くありますが、特別養護老人ホーム(特養)の場合はほとんどの施設が危険防止のために鍵がついていません。
そのため、入浴中や外出中などに他の入居者が居室に侵入することもできるので、金品がなくなると疑心暗鬼になる人もいます。
この金品をめぐるトラブルは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、持ち主本人の勘違いによるものです。実際にはなかった物なのに「なくなった」と本人が思い込んでしまいトラブルに発展するケースです。
軽度の認知症や多少の物忘れがある人はもちろん、物に執着している入居者に多く見られます。
2つ目は、認知症などによって実際に他人の物を盗んでしまう、もしくは自分の物だと思い無断で取ってしまうケースです。
取った本人は自分の物だと思い込んでいる可能性が高いので、職員が話をしてもなかなか納得してもらえないこともあります。そのようなときは、家族にあいだに入ってもらうなどして問題解決を目指します。
トラブルが起きたら、抱え込まずに誰かに相談することが大切です。通常は生活相談員や信頼できるスタッフなど、施設の職員に相談します。
施設職員は、双方の話をしっかり聞いたうえで入居者のあいだに入り、問題解決に向けて対応します。
スタッフがあいだに入っても良い方向に進まないときは、当事者同士での話し合いだけでなく、家族を交えた話し合いの場を設けることもあります。
それでも入居者同士のトラブルが解決しないときは、最終的に顔を合わせることのないようフロアの移動が検討されることも。しかし、ここで難しいのはどちらの入居者が移動するかということです。
この点についても本人や家族、施設職員によって慎重に検討を重ねて対応することとなるでしょう。
一方、認知症を持つ人によるトラブルの場合は、病状の悪化がないか医師の診察を促したり、スタッフによる見守りを強化したりしてトラブルの再発を防止します。
暴力トラブルを起こすおそれのある入居者に関しては、一人きりにしないようにするなど施設側の配慮も必要です。
施設でのトラブルを未然に防ぐためには、家族は普段から本人とのコミュニケーションを密に図ることが大切です。
そのうえで「施設の生活や人間関係で不満があるときは早めに教えて」と本人に伝えておくとよいでしょう。そうすれば、問題が大きくならないうちに職員に相談することができます。
一方、入居者のなかには家族に心配をかけたくないと考え、トラブルに巻き込まれても我慢してしまう人がいます。そのため、普段から本人の話をよく聞くことが、トラブルの悪化を防ぐ重要なポイントになるでしょう。
なぜなら、話の最中にいつもと違う様子が見られ、施設での生活に悩みを抱えていると気づくこともあるからです。本人が我慢せず、言い出しやすい環境づくりも必要といえます。
なお、トラブルを招く原因になり得る金品は、入居者本人に管理させないほうが得策かもしれません。施設にはお金や高価な物を持ち込まないことが一番ですが、どうしても持ち込みたいという希望がある場合は、施設に管理してもらうとよいでしょう。
老人ホームでは、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。しかし、施設選びで重要なのは、起きたトラブルにどう施設側が対処してくれるかです。
トラブルが起きたときの対応で、施設の善し悪しがわかるといっても過言ではありません。
心配な人は、入居前の見学や面接の際に、「トラブルが起きたときはどう対処しているのか」と質問してみるのもおすすめです。質問に対して明快な返答がある施設は、トラブルの対処もしっかりしていると思ってよいでしょう。
また、入居者やスタッフを含め、施設全体の雰囲気が明るい老人ホームはトラブルも少ない傾向にあります。職員の挨拶がしっかりできているか、笑顔で過ごしている人が多いかなども施設選びのときにはチェックします。
自分の家族がトラブルに巻き込まれるおそれがある施設は、なるべく避けたいものです。しかし、たくさんの人が生活をする老人ホームでは、どんなに気をつけていてもトラブルが起きてしまうこともあります。
穏やかな日々を過ごせるよう、不満が小さいうちに職員に相談してトラブルが大きくなるのを防ぎましょう。