記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
理想の老人ホームに出会うにはどうしたらいいのでしょうか? まずは入居のための条件を整理するところからはじめてみてはいかがでしょう。理想が高いと費用も非常に高額になるなど、理想が現実的ではないこともあります。
現実的な理想の老人ホームを見つけるために、7つの項目から老人ホームを探してみましょう。
費用は、老人ホーム選びのなかでも必須の項目ですよね。どんなに入居したいと思える老人ホームがあっても、準備できるお金がないと希望を叶えられないのが現実です。
また、しっかり計算ができていないと、いつお金が尽きるかと不安を感じ続けながら暮らすことになりますし、最悪の場合、途中で費用が払えなくなり退去を余儀なくされる可能性も出てきます。
そこでまずは払えるお金をしっかりと計算しましょう。
計算するのは、「払える費用がどれくらいあるのか」と「今後の生活でかかる費用」。それらを算出するための内訳は以下になります。
<払える費用を算出するには>
1.年金額を把握する
2.預貯金の額を把握する
3.資産(株式・不動産・保険など)を把握する
4.ローン借入金など、マイナスの財産も把握する
5.家族の支援金額を把握する
<かかる費用を算出するには>
1.老人ホームの入居一時金、月額費用を把握する
2.日常生活費(日用品や医療費など)の目安を計算する
3.介護費用を把握する
誰であっても何歳まで生きられるかの予測はできませんが、「人生100年時代」の現代では、100歳までは見積もっておいたほうがよいかもしれません。
「入居から100歳までにかかる費用」よりも「入居から100歳までの払える費用」が多ければ、100歳まではひとまず安心です。
ただし、当然100歳以上になっても元気でいられることもありますし、入院などでの予定外の出費も考えられます。必ず余裕を持った計算になるようにしておきましょう。
老人ホームでかかる主な費用は、「入居一時金」と「月額費用」です。
「入居一時金」は主に有料老人ホームで必要になり、0円から高級有料老人ホームでは数億円かかることもあります。
「月額費用」で計算される項目は施設種類によっても異なりますが、家賃や管理費、水道光熱費、食費などが考えられます。想定外の料金が別途かかる可能性も出てくるため、月額費用の内訳は必ず確認しておきましょう。
入居一時金や月額費用といった施設に支払う費用とは別に、「日常生活費」も発生します。
医療費、被服費、おむつ代、電話代、交通費、趣味や娯楽にかかる費用、日用品や理美容にかかるお金などです。この金額は人によりさまざまですが、一定の金額が必要であることは間違いありません。日常生活費も余裕をもって計算しておきましょう。
また、元気なうちから入居できる老人ホームもありますが、多くの場合は介護が必要な要介護状態で老人ホームを探すことになるのではないでしょうか。
必要な「介護サービス」を利用するにも、その費用がかかります。介護サービス費は、要介護度によって定額の施設(介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなど)と、必要なぶんだけ外部の介護サービスを利用する施設(住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など)があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
(メリット・デメリット)
要介護度によって定額の施設……たくさんの介護サービスを受けても料金が一定なため安心な反面、あまり介護が必要でない場合には割高になることもある
外部の介護サービスを利用する施設……必要なぶんのみの利用なため、介護サービスをあまり利用しないうちは低額ですむ反面、重度の要介護となった場合には高額になってしまうこともある
現在が自立の状態であっても、将来介護が必要になることを想定して費用に組み込んでおく必要があります。
また、サービスの種類や手厚さによっても施設にかかる費用は変わります。
職員の数や介護福祉士資格の取得者が多く、一人ひとりの入居者にきめ細やかなサービス提供ができたり、看取りをおこなっていたり、口腔ケアやリハビリに力を入れているなどあれば、そのぶんは料金に加算されると考えておいたほうがいでしょう。
将来も考えて、慎重にサービス内容や料金プランを選ぶことが必要になります。 なお、生活保護費で生活をしている場合は、その生活保護の範囲内の老人ホームに入居が可能です。ケースワーカーに相談してみましょう。
・払える費用を算出する
・老人ホームにかけられる費用、日常生活にかかる費用を算出し、それに見合う施設を探す
・複数の老人ホームの料金プランを見比べ、不明点は確認する
・施設による介護サービスの有無を検討する
老人ホームを探す際に、場所選びも重要なポイントです。ある程度エリアが決まらないと、具体的な施設選びを進めることができません。
特に悩ましいのは、子供が親元を遠く離れて暮らしていたり、遠距離介護をしていたような場合です。「そのまま親が住み慣れた町で老人ホームを探して暮らすのか、それとも子供のそばに住むのか……」。難しい問題ですね。
また、それ以外にも、都会に住むか・郊外に住むのか、それとも田舎やリゾート地に住むかといった、さまざまな選択肢があります。
若いうちは、職場に近いことや子どもの学校に近いことなどの居住地の条件がありますが、高齢になるとそれらを考える必要がなくなります。むしろ自由度が高すぎて、かえって悩んでしまう場合もあるでしょう。
老後の暮らしはどんな場所で過ごしたいのか、条件を考えてエリアを絞り込んでいきましょう。
場所を選ぶときのパターンと注意点を見ていきます。
場所を選ぶときの主な選択肢として、まずこのふたつのパターンが考えられます。それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
<親が住み慣れた町に近い>
○ 友人が気軽に遊びにきてくれる
○ 慣れた場所なので、外出が気軽にできる
× 家族が離れた場所に住んでいる場合、訪問しづらい
<家族が住む街に近い>
○ 家族が訪問しやすい
○ 要介護度が進んだときや最期が近づいたとき、家族が近くにいるので安心
× 住み慣れた町から離れている場合、友人との交流がしにくくなる
頼れる家族が近くにいれば、すぐにかけつけてもらえるなど安心です。その一方、住み慣れた土地を離れるのは、生まれ育った家を離れることや、友人や近所の人ともう会えないかもしれない寂しさがあります。本人の希望をしっかり確認しましょう。
老人ホームの場所が家族の近くかどうかという以外にも、以下のような選択肢があります。
<都会>
○ 外出や買い物を気軽に楽しめる
○ 家族が訪問しやすい
× 静かに暮らすことができない
× 自然が少ない
<郊外>
○ 静かで心が落ち着く
○ 自然のよさと、都会の便利さ、両方がある
× 駅から遠いなど、訪問しづらい場所が多い
<所縁のない(少ない)田舎やリゾート>
○ 静かで心が落ち着く
○ 自然に触れられる
○ その土地ならではの楽しみがある
× 買い物が不便
× 家族が訪問しづらい
これまで都会で暮らしてきた高齢者であれば、都会を離れたくないという方もいるでしょう。あちこち外出して活発な生活を続けることで、生活に張りが出て元気でいられるということもあるかもしれません。
一方、駅から少し離れた郊外の立地であれば、自然が多くゆったり暮らせます。また、郊外は都会に比べて地価が安いぶん、老人ホームの費用が割安になるというメリットも魅力です。
頼れる家族がいない、老後は自由気ままに暮らしたい、といった方であれば、リゾートや子どものころに暮らした田舎なども選択肢に入るでしょう。その場合は、元気なうちにしっかり下見をしたり、入居前に体験入居をするなどをしたほうが安心です。
・「住み慣れた町」、「家族が住む町」、どちらに住むのがよいかを考える
・「都会」、「郊外」、「田舎やリゾート」、どこに住むのがよいかを考える
・住みたいと思った町にどんな老人ホームがあるのか、条件や金額の相場を知る
・条件や金額が難しい場合、他の場所も検討してみる
施設に入居したあと、そこを終の棲家にするのか、それとも状況に応じて住み替えをするのかによって、老人ホーム選びは大きく変わります。
老人ホームに入居してから住み替えをするパターンとしては、「自主的に住み替える」「やむをえず住み替える」、このふたつが考えられます。
それぞれの例を見てみましょう。
<自主的に住み替えるケース>
・元気なうちはアクティブに暮らしたいと考え、都会のサービス付き高齢者向け住宅に入居。要介護度が上がり外出が困難になったことから、元気なときに探しておいた郊外の介護付き有料老人ホームへ住み替えた
・特別養護老人ホームに空きが出るまで入居一時金0円の介護付き有料老人ホームへ入居。希望の特養に空きがでたので、退去して特別養護老人ホームへ
<やむをえず住み替えるケース>
・一人暮らしが心配で、シニア向け分譲マンションを購入。以前から糖尿病でインシュリンを自己注射していたが、片麻痺になり自己注射ができなくなった。マンションを手放して、24時間看護師が常駐し、注射もしてもらえる介護付き有料老人ホームへ
・終の棲家にしようと思い介護付き有料老人ホームに入居したが、入居中に胃ろうを設置。しかし施設では胃ろうに対応できず、退去しなければならないことに
これらはあくまで例ですが、このように状況によって住まいを変えたくなる・変える必要が出てくる可能性があります。
現在の生活状況だけでなく、10年、20年先、夫婦であればどちらかが亡くなったときのケースも想定しておきましょう。
現在どんなに健康だったとしても、死を迎える直前になると、多くの人にはなんらかのケアが必要になります。
どんなケアに対応できる老人ホームなのか、対応できなくなった場合、どんな選択肢を用意してもらえるのかは、事前の確認が必要です。
施設に対応できない医療ケアが必要になった場合や、認知症で他の入居者に迷惑をかけるようになることで、退去を余儀なくされてしまうケースもあります。望まない退去となる可能性もあるため、退去の条件を理解した上で老人ホームを選ぶことが重要です。
入居している施設でそのまま暮らし続けられなくなったとき、複数の老人ホームを運営する事業者であれば、より条件に合う施設へ移動できる提案をしてくれる場合や、大型の老人ホームだと、「健康な高齢者向けの棟」と「介護が必要な高齢者向けの棟」に分かれていることもあります。
自立で入居して、その後介護が必要になった場合は、同じ敷地内ですぐに引っ越しができ、慣れた場所で住み続けることができます。
事前に将来を想定できていればこのような老人ホームを選ぶこともできますし、もしものときを想定しておけば、いざというときに慌てることも少なくなります。
・状況によって住み替えるのか、同じ施設に最期まで住み続けたいのかを考える
・住み替えする前提の場合、どのタイミングでどう住み替えるのか考える
・終の棲家にしたい場合、退去の条件や、退去が必要になったときの選択肢を施設に確認しておく
高齢になり体に不自由が出てくると、多くの時間を老人ホームで過ごすことになります。老人ホームは自分の家。心地よくいられる場所なのかどうかはとても重要です。
老人ホームは規模も設備もさまざまで、一軒家を改築したようなこぢんまりしたホームもあれば、100人を超える大規模なところもあります。また、家庭的な雰囲気を好む人もいれば、近代的で高級感ある施設を快適に感じる人もいるでしょう。
とにかく、入居する本人にとって居心地のよい場所であることが重要です。
老人ホームの空間は、プライベートスペースである「居室」と、他の入居者と共に過ごす「共有部分」に分かれます。それぞれに以下の傾向があります。
居室はくつろぐことができるプライベートスペースです。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅であれば、居室は「個室」であることがほとんどです。
元気な高齢者を対象とした施設の場合、居室内にキッチンなども完備していることがあります。特にサービス付き高齢者向け住宅であれば、広めの空間も少なくありません。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設だと、個室だけではなく多床室という数人で使用する大部屋の場合もあります。
個室は広ければ広いほどよいというわけではありません。広い部屋は魅力的に見えますが、足元がおぼつかなくなったときには小さい部屋の方が何かと便利です。すぐに必要な物に手が届きますし、移動も最小限ですみます。
家族にとっては満足度の高い部屋が、本人にとって最適なものとは限りません。本人の生活のしやすさを最優先で考えましょう。
また、入居定員数が50人を超えるような比較的規模の大きいホームは、部屋のタイプが複数ある場合があるので、入居する本人にあったタイプを選ぶようにしましょう。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは、居室と共有部分を配置する際に「ユニット型」というスタイルが増えています。ユニット型の場合、部屋の配置だけでなく、介護のスタイルも従来と異なります。
ユニット型の老人ホームでは、共同生活や、入居者一人ひとりの個性、生活リズムを尊重します。具体的には、10人程度のグループをひとつの生活単位(ユニット)とし、そのグループごとに生活の場を設けるものです。
1ユニットごとに専用のダイニングやリビングを設け、その近くに居室を個室で配置。スタッフもユニットごとに専任とします。
こうすることで、大規模な老人ホームであっても顔見知りの入居者やスタッフと、家族のように生活できるのです。スタッフ側も、入居者をより深く理解しきめ細かいケアを行なえるというメリットがあります。
ですが一方で、大食堂が少し離れた場所にあり、移動すること自体がリハビリにつながる、多くの人とコミュニュケーションをとることが介護予防につながるという考えもあります。これらの意見もふまえて選んでみるとよいでしょう。
食堂・レストラン、浴室、機能訓練スペース、フロントなどは、ほぼすべての老人ホームにある基本の設備です。それ以外に老人ホームによっては、談話室、娯楽室、理美容室、ライブラリー、来客用宿泊施設(ゲストルーム)などがあります。
高級な有料老人ホームであれば、サウナ、温泉、プール、売店などホテル並みの豪華な設備があるところも。
空間の広がりなどは、ホームページの写真や文章だけではわかりません。気になる施設があれば、必ず見学や体験入居をして、その設備を本人の目で確認するようにしましょう。
また、要介護度が重くなれば、豪華な設備があっても利用が困難になります。利用できないのに高額な月額費用を払い続けることがないように、そのあたりも考えておきましょう。
老人ホームで特に気にして欲しい場所としては、浴室も挙げられます。
浴室は頻繁に利用する場所です。日本には入浴文化が根付いていますし、気持ちよくお風呂に入ることは、楽しみのひとつにもなります。
共同で使用する大浴場もありますが、1人用の浴槽(個浴)も増えています。さらに、ひとつの浴室に複数の個浴用の浴槽があるものだけでなく、1浴室に1浴槽というプライバシーが守れる浴室もあります。
そのほか、寝たまま入浴できる機械浴や、椅子に座った状態で入れるリフト付きの浴槽などもあり、設備は老人ホームによりさまざまです。
入浴設備は個室なのか、共同浴場なのか、浴槽はどんなタイプがあるのかしっかり確認しておきましょう。なお、見学の際は使用中で見学できなかった、というケースもあります。その場合は、できれば写真を見せてもらい、不明な点も質問して確認するようにしましょう。
また、入浴の回数や自由度の確認をすることも重要です。指定の時間外の入浴は可能か、可能であれば料金は発生するのかなども含めて、快適な老人ホーム生活のために把握しておきましょう。
・普段過ごす部屋はどんな部屋がよいのか考える
・共有スペースにどんな設備があるとよいのか考える
・生活したときを想像し、食堂や浴室もどんな形式がよいのか考えてみる
老人ホームへの入居を考えるようになるのは、要介護度が高くなり在宅介護が難しくなったという方が多いかもしれません。施設選びでも重要な要素となる介護サービスについて見てみましょう。
老人ホームでは、必要に応じて入浴、排泄、着替え、移動、食事などの介助を受けながら生活します。入居している老人ホームのスタッフが行うケースと外部の事業者と契約してサービスを受けるケースがありますが、どちらの場合でも介護サービスそのものは大きくは変わりません。
介護サービスの提供がある主な施設は、介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設です。随時、必要なケアを受けることができます。
介護サービスの提供がない主な施設は、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などです。
介護サービスがついていれば要介護度が高くても安心ですが、ついていない施設は、要介護度が低いうちは介護サービス費が定額ですむというメリットも。
介護サービスがついていない施設では、実際に介護サービスを提供するのは施設ではなく別途契約する介護サービスの事業者となり、在宅介護同様に訪問介護を受けるかたちになります。
訪問介護の事業所が老人ホームと同じ敷地内にある場合もありますが、事業者は入居者自身で気に入ったところを自由に選ぶことになります。
介護サービスは、基本となる介護の技術が大きく変わることはありません。しかし、それを行うのは人です。何を大切にしながら介護をするかは、その事業者よって異なります。
たとえば飲食店に例えるとわかりやすいでしょう。食事の提供を受ける場所、という点はどの飲食店も同じです。しかし、味を重視しサービスは二の次の飲食店もあれば、サービスや雰囲気にこだわったレストランもあります。また、回転率を重視し利益を最優先する飲食店もあります。
介護サービスも同様で、何を重視しているかで、介護の方法や接し方はさまざまです。それぞれの老人ホームが独自のこだわりを持って運営しています。
スケジュールひとつとってみても、「起床、食事、入浴、排泄、就寝…」と、老人ホーム側が決めたスケジュールに合わせて入居者に行動してもらう施設がある一方で、入居者が自分のペースである程度自由に食事や入浴をすることができる施設もあります。
現在では、入居者の個性を尊重し、一人ひとりにあわせた個別ケアをする老人ホームが増える傾向にありますが、入居を決める前には体験入居などをしてみると実態がわかりやすいでしょう。
さまざまな老人ホームが増える中で、以下のように独自の特色を打ち出す老人ホームも増えています。
・認知症ケアに力を入れている
・それぞれの入居者に担当の介護スタッフを決めて、信頼関係を築くことを重視する
・国家資格である介護福祉士の所有者を増やし、質の高い介護サービス提供する
・介護はサービス業だと考え、スタッフのマナー教育に力を入れる
・元気な状態を保てるように、暮らしの中に自然なリハビリを取り入れる
・効率的に業務を行うことを重要視する
特別なサービスや、強いこだわりがある場合は、ホームページやパンフレットでその内容を明記しているところがほとんどです。しっかりチェックしましょう。
・施設による介護サービスのあり・なしを選ぶ
・どんな介護サービスを受けたいのか考える
・気になる老人ホームには、介護にどんな特徴があるか確認する
・特にこだわった介護を受けたいのであれば、その特徴のある老人ホームを探してみる
・介護サービスを訪問介護事業所から受ける場合、そのサービスの内容や特徴をしっかり確認する
高齢になると病気の話が挨拶代わりになる、というほど、高齢者と病気は切っても切れない関係です。健康体だったのに突然……というケースもありますが、年齢を増すごとに、認知症や持病を持つ方も多くなります。
高齢者は、病気や疾患とうまく付き合っていくことが重要になり、老人ホーム選びをその視点で考えることもできます。
多くの老人ホームではクリニックや病院と連携していますが、連携の質・内容はさまざまです。
何かあったときに救急搬送する程度の関係性もあれば、定期的に訪問診療に来てカルテが病院に保存されていたり、普段から施設と病院の医師が電話などでコミュニケーションをとり指導を受けているところもあります。
連携する医療機関では、すべての疾患に対応できるわけではありません。内科、精神科などそれぞれ専門分野がありますから、担当外の専門的な診療が必要な場合は、別の医療機関にかからねばならない場合もあります。
また、医療法人が運営する老人ホームでは、隣接する建物にクリニックを開いたり、同じグループ内の医療機関でスムーズに診療を受けられるなどの工夫をこらしています。
医療面のケアが必要な場合は、それらの老人ホームを探してみるのもよいでしょう。
ただし、病院と協力関係にある、医療法人が運営している、クリニックが隣接しているというだけで安心せずに、その内容をきちんと知ることも重要です。
看護師が24時間常駐する施設も増えています。注射や胃ろうのケアは医療行為となるため、原則、看護師でないとできません。
看護師が常駐する老人ホームであれば医療ケアの対応をしてもらえるため、必要な人にとっては心強い存在です。
ですが老人ホームは病院ではありません。日々の健康管理や、早めに悪い兆しに気付くことはできても、実際に診察や医療行為を行うのは医師の仕事であるため、過大な期待は持たないようにしましょう。
多くの場合、老人ホームに医師は常駐していませんが、看護師が24時間常駐していた場合に行われる医療面のケアは、主に以下の内容となります。
・体温、心拍数、血圧を測る
・薬を管理、配付する
・健康に関する相談にのる
・医師が来た時に、訪問診療のサポートをする
・胃や鼻から直接栄養を流し込む経管栄養の管理をする
・インシュリンの投与をする
・透析のサポートを行う
・たん吸引・在宅酸素を行う
*対応できる内容は施設により異なります。
*たんの吸引などは、所定の研修を受けた介護職員も例外的に対応が可能です。
・どんな医療面のケアが必要か・必要になりそうかを考える
・必要な対応を行える老人ホームを探す
・見学時に具体的な質問をするなどして、病院との連携、看護の質をみきわめる
人生の最期の迎え方はさまざまですが、最近では自然な最期を望む高齢者も多く、病院ではなく老人ホームでの自然な看取りを望む入居者も増えています。
ですが看取りについて、入居の時点でしっかり考えている人は少ないのではないでしょうか。だからといって、死は避けては通れません。すべての人に必ず訪れます。
本人も家族も納得のいく最期の瞬間をすごせるかどうかは、老人ホーム選びにもかかっているのです。
まず第一に、その老人ホームが看取りを行なっているかどうかを確認する必要があります。すべての施設で看取りをしているわけではないからです。
施設によって、平穏な死として自然死を受け入れる老人ホームもあれば、できる限り病気と戦うのが望ましいと考え、看取りに消極的なホームもあります。入居者本人が望む看取りができるのかを、入居前にしっかり確認する必要があるでしょう。
考え方に合わない老人ホームに入ってしまうと、最期の瞬間が近づいたときに施設を退去せざるをえなくなるなど、不本意な選択をすることにもなりかねません。
看取りを希望する場合には、施設に対してしっかりその意思を書面で伝える必要があります。老人ホームや病院では、急変などの場合にはまず命を救うことが優先されます。本人や家族から延命を拒否するという明確な意思表示がない場合、命を救わないことは許されないからです。
ほとんどの老人ホームにはその意思表示を記す事前確認書や同意書が用意されているので、確認してみましょう。
また、入居する本人や家族が看取りについて正しく知ることが大切になります。看取りを行うということは、終末期の高齢者に延命治療を行わず、見守るケアをするということです。それにはある程度の覚悟も必要になります。
衰弱する高齢者に医療ケアをほどこさず、ただ見守るしかない状態が辛いと考える家族もいます。
どのような看取りがベストかという判断は人それぞれで異なり、正解があるわけではありません。高齢者が延命をしてできる限り生きたいと願うのであれば、その気持ちも尊重すべきです。
自然死を選択する判断は、本人にとっても家族にとっても、本当に難しいものです。また、終末期を過ごす中では、一度決めたとしても心が揺れ動くのが当然といえます。このような気持ちに寄り添い、きめ細かくアドバイスやフォローをしてくれる老人ホームを選びたいものです。
見極めるためには、いままでの看取りで具体的にどんなことをしてきたのかを聞いてみましょう。また、自分の思いを話し、そこにどのようなアドバイスをもらえるか確認してみることも有効です。
・最期を迎える時にどう過ごしたいか、本人と家族で話し合っておく
・気になる老人ホームが、その考え方に対応できるかどうかを確認する
・老人ホームに、看取りの内容・質について確認する