記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
老人ホームへの入居を嫌がる高齢者は少なくありません。
それまで暮らしてきた我が家はたくさんの思い出が詰まった場所です。子どもの頃から住み続けているのであればなおさらでしょう。家族の思い出がある自宅を離れたくない、そう考える気持ちは理解できないものではありません。
また、長年かけて築いてきた、近所の人たちや親しい友人との交友関係を失いたくないという気持ちも、大きいのではないでしょうか。
それに、自宅を離れることはできても、もしかしたら介護をされるなら家族がいいと思っているのかもしれません。
第一生命研究所の調査によると、「将来介護を受けたい場所」という質問に対して、男性の約52%、女性の37%が「自宅」と回答しています。
男性の半分以上が「自宅で介護を受けたい」と望んでいる結果です。対して、女性は施設で介護を受けたいと思っている人のほうが多く、性別によって考え方に少し違いがあるようです。
自宅で介護を受けたい理由としては、「住み慣れた自宅で暮らしたい」「家族と一緒にいたい」「お金がかかる」などが上位でした。
また、拒否の理由として考えられるのは、老人ホームに対するイメージです。「自分は見捨てられたのではないか」と感じ、老人ホームを姥捨て山のようなところだと考えている方も少なくないでしょう。
うるおいのない、暗い雰囲気の空間というイメージを持っている方は、年代性別を問わず意外と多いものです。
このような負のイメージは、現在の老人ホームの実像を知らないことも大きな要因です。
現在では、きれいなマンションのような外観で、明るい雰囲気の施設がたくさんあります。高齢者たちがいきいきと楽しく暮らす施設も多いものです。
このように、拒否する理由はさまざまです。まずは何が嫌なのかをひとつひとつじっくり聞き、解決の方法を探っていきましょう。
例えば、思い入れのある自宅から離れたくないのであれば、自宅近くの老人ホームを選ぶことで頻繁に帰ることができます。近所の友人と離れ離れになるのが嫌なときにも、この選択が有効です。
お金がかかるから嫌だと考えているのであれば家族が負担する方法もありますし、老人ホームに悪いイメージを持っているのであれば、パンフレットを見せたり実際に見学に行くことで考えが変わることもあります。
実際の施設の雰囲気を見てもらったりサービス内容の説明を受ければ、より具体的に入居後のイメージもわくかと思います。
また子どもの家の近くの老人ホームを選べば、家族は頻繁に面会に行けますし、孫に会える回数も多くなるかもしれません。
時間がかかるかもしれませんが、ひとつひとつ不安や悩みを解決してみましょう。
子どもが老人ホームを勧めるのは、親を心配してのことです。ましてや相談者のお父様は一人暮らし。その心配は大きいことでしょう。
本人の思いを確認しながらも、相談者の考えもしっかりと言葉で伝えてみてください。大切なかけがえのない存在だからこそ安心できる生活をしてほしい、などと言葉にすることも重要です。
可能なら電話ではなく直接会って話したほうが、お互いの気持ちが通じやすいと思います。
無理やり老人ホームに入居してもらっても、本人にとって本当に幸せかどうかはわかりません。年をとってから新しい環境に飛び込むのは精神的なストレスや不安もあります。
もし住み慣れた自宅で暮らし続けたいと考えているのであれば、その気持ちを尊重することも大切です。
訪問介護やデイサービスなどの在宅介護サービス、栄養バランスのとれた食事を届けてくれる配食サービス、セキュリティ会社などが提供する見守りサービスや人感センサーなどを上手に利用することで、しばらくは不便なく自宅で暮らすことができるかもしれません。
要介護度が上がるなど、再び心配な状態だと感じたら、改めて老人ホームを検討してもらうのもよいでしょう。
親は一番近い身内であり、人生の先輩でもあります。敬意と愛情を持って接することが大切です。