記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
老人ホームやデイサービスなどで行われるレクリエーション。近年、その大切さが強く認識されるようになっています。
レクリエーションは高齢者の単調になりがちな日々の生活にうるおいがを与え、生きる意欲を向上させることにもつながります。
レクリエーションが心身に与える効果や種類について、見ていきましょう。
介護や見守り、食事などを提供してくれる老人ホームへの入居は、日々の安心感を与えてくれる一方で単調になりがちです。
そんな毎日の喜びや生きがいとなるのがレクリエーションです。
レクリエーションとは、気晴らしや娯楽、余暇といった意味をもつ英語のrecreationが、そのまま日本語化したものです。単語のもとの意味は、こわれたものを作り直すという「再創造」。
これが、疲れを癒やして元気を取り戻すという、今日広く使われている意味に転じました。
レクリエーションへの参加は楽しいだけではありません。
介護を必要とする高齢者に対するレクリエーションがもたらす効果について、いくつかの研究結果が発表されています。
要介護度3から5の高齢者3名に対し、30分程度のレクリエーションを2ヶ月間、週2~3回実施して、その前後で2つの指標を比較してみた研究(*1)があります。
結果としては、機能的な評価は全員一定程度の改善が見られました。意欲面でも全員に改善が見られたのですが、要介護度が高い人ほど改善の幅が大きいという結果でした。
他にも、グループで個別レクリエーションを実施し、その効果を測定した研究結果(*2)があります。
本人の希望、趣味、職歴などを加味し、書き物、歌、作品づくりのどれかを選んでもらい、それを10名ずつの3グループで実施しました。
活動は1回45分で週3回、期間は半年で、1ヶ月ごとにいくつかの指標で効果を測定しました。
結果としては、歌については有意な機能上昇を認めました。
歌は認知症の進行予防のみならず、改善も期待できるレクリエーションであると報告されています。
作品づくりや書き物については全体的な好影響は認められなかったものの、参加率が高く積極的な人には認知機能の上昇を見ることができたようです。
ひとつめのレポート内に「心が動けば身体も動く」という表現があるほどに、レクリエーションは参加者のコミュニケーション能力や意欲の向上につながっています。
短期的にはADL(日常生活動作)の改善は見られなかったものの、長期的には改善をもたらす可能性も指摘されているのです。
また、施設の入居者・利用者の状況が改善することは、施設で働くスタッフたちにとってもよい影響をもたらします。
普段見ている利用者の姿からは見えない面に気づくきっかけとなり、個々の利用者にとって、最善の介護は何かを見つけるための、大切なヒントを得ることができるのです。
介護など、生活上のサポートが必要になっても、より自分らしく生きるために。レクリエーションが果たす役割は大きいといえるでしょう。
レクリエーションにはさまざまな種類がありますが、一番わかりやすい分け方は、「身体を動かすもの」「頭を使うもの」「両方を使うもの」という分類です。
もう少し細かく分けると、指先を動かすものや、音楽あるいは映画鑑賞といった視覚や聴覚を用いるものもあります。
公益財団法人日本レクリエーション協会のホームページを見ると、300種類ほどのレクリエーションが紹介されており、「介護レク」「認知症レク」というジャンルには、それぞれ60~70種類程度が分類されています。
椅子に座りながらボールを蹴る「チェアサッカー」、うちわを使ってふたりで風船を打ち合う「風船うちわラリー100」、椅子に座って片足を上げて文字を書くように足を動かす「足あげ書道」、指導員の動きを鏡で映したように動く「かがみ体操」など、高齢者が無理なく楽しめる運動があります。
ことばあそびやいろいろな種類のパズル、カルタなどのゲームがあります。
他にも、地図を見ながら都道府県や県庁所在地を答える「全国ご当地マップ」、ドリルなどを使用して脳を鍛える「脳レク」などで、脳を活性化させてることができます。
レクリエーションのなかには、身体と頭を同時に使うものも多くなっています。
例えば、右手・左手の動きとグー・パーの動きを連動させて、途中でその動きを逆転させることで脳が混乱する「連続グー・パー」のようなゲームです。
上記以外にも、簡単なペーパークラフトやフラワーアレンジメントなどの手先を使う創作活動系レクリエーションや、歌う、楽器を演奏する、音楽を聴くなどの音楽系、季節の行事や誕生会などのイベント系、遠足や散歩などの外出系など、多彩な種類があります。
人にはそれぞれ、得意分野があります。運動が得意という人も、手先を動かして何かを作り出すことが好きな人もいれば、音楽が好きな人もいるでしょう。
レクリエーションの種類が多ければ、自分のやりたいことを進んでできる機会も多くなります。
レクリエーションは、その内容によって行われる人数や、そのシチュエーションも異なります。
集団で行うものであれば、他の入居者やスタッフとの交流でコミュニケーションが深くなります。個別に行われるものであれば、身体状態などを気にすることなく没頭してレクリエーションに取り組むことが可能です。
また、レクリエーションの時間以外にも日常的に取り組める、絵を描いて飾る、日常の中で音楽を流すなどといった方法もあります。
なかにはレクリエーションをしたくないという高齢者もいますが、レクリエーションへの参加は自身で決められることがほとんどです。
気分が乗らない、あるいは体調がすぐれない場合などは、無理に参加を求められることはありません。
2014年には「レクリエーション介護士」という資格が制定されるなど、レクリエーションの充実化はより進んでいます。
老人ホームでレクリエーションを楽しみたい方は、施設ごとの力の入れ方を確認してみるのもいいかもしれません。