記事公開日 2023/02/03
記事公開日 2023/02/03
地域密着型サービスは比較的新しいサービスです。通常の介護保険サービスとはどのような点が異なるのでしょうか?
在宅介護で利用できるものも含めてたくさんの種類がある地域密着型サービスですが、ここでは入居施設に的を絞って解説します。
地域密着型サービスとは、その地域に住む人を対象に、市町村ごとの特性を活かして提供される介護保険サービスです。介護が必要になっても住み慣れた地域で生活を継続できるように、高齢者を市町村で支えていく目的で創設されました。
本来、介護保険サービスの指定や監督は主に都道府県が行っていますが、地域密着型サービスは市町村が行います。これは地域のニーズを汲み取り、必要に応じて施設を整備していくためです。
サービスの内容は市町村の自主性や主体性に任されており、地域ごとに差があります。
そのため、地域密着型サービスを利用するためには事業所と同じ市町村に住民票があることが必要です。
地域密着型サービスの種類は、訪問サービス、通所サービス、入居施設などさまざまで、全部で9種類あります。
ここでは入居系の地域密着型サービスに注目して解説していきます。
長期間入居ができるタイプの地域密着型サービスには、3つの種類があります。
地域密着型サービスの施設であっても、通常の特養や介護付き有料老人ホームなどと同様の介護や生活上の支援を受けることができます。
しかし、どの施設も入居定員は通常の施設に比べ少人数です。居室は個室対応の施設が多く、プライバシーへの配慮と少人数ならではのアットホームな雰囲気が特徴となっています。
地域密着型サービスの3つの入居施設について、それぞれ詳しくみていきましょう。
地域密着型特別養護老人ホームは、地域や家族との交流・協力を大切にしながら、自律的な生活を送れるように支援していく施設です。
主な入居対象者は、施設のある市町村に住民票を持つ要介護3以上の人です。ただし、要介護1・2でも、緊急性があると判断された場合には入居できるケースもあります。
定員は29名以下と一般的な特別養護老人ホームより小規模です。プライバシーが配慮された全室個室のユニット型が増えており、10人以下のグループを1つのユニットとし、それぞれに専任のスタッフが担当となります。
入居者・職員が顔馴染みのメンバーとして、自宅での生活に近い環境で食事や排泄・入浴などの介護を受けられます。
地域密着型特定施設入居者生活介護とは、市町村の指定を受けた定員29名以下の小規模な有料老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームなどを指します。
職員の人員や設備・運営方法など、定められた基準をクリアした施設のみが地域密着型特定施設入居者生活介護の指定を受けることができます。
食事や入浴などの介助やリハビリなど、その人に必要な支援を受けながら、できる限り自立した生活を送ることを目指した施設です。
施設のある市町村に住民票を持つ、要介護1以上の人が入居対象となります。
地域密着型認知症対応型共同生活介護とは、認知症を持つ高齢者専用のグループホームです。グループホームには広域のタイプはなく、すべて地域密着型となります。
グループホームはできる限り自立した生活が送りながら、認知症の進行を穏やかにすることを目的とした施設です。
本人の認知機能、身体機能に応じて、食事や排泄、入浴などの介護や日常生活上の世話・リハビリなどを認知症の知識を持つスタッフが提供します。
施設の定員は、5~9人を1つのユニットとして最大で3ユニット。施設全体での最大入居者数は27人です。
主な入居対象者は、施設のある市町村に住民票がある認知症の診断を受けた要支援2以上の人です。
グループホームについて詳しくはこちらをご覧ください。
地域密着型サービスの入居施設には、利用する高齢者と家族の双方にさまざまなメリットがあります。
地域密着型サービスは、「介護が必要な人を地域で支える」という大きな役割を担っています。そのため、利用できるのは基本的にその地域の住民のみです。
高齢者は環境の変化が苦手といわれています。環境が変わると体調を崩したり、認知症が進行してしまう恐れがあるのです。しかし地域密着型サービスは、自宅や馴染みのある地元から遠く離れる心配がありません。
行きなれた商店や公園にも通うことができ、住み慣れた環境のなかで生活を続けることができます。本人にとって大きな安心につながるでしょう。
同じ地域で生活を続けられるのは、本人にとってだけではなく家族にとってもメリットがあります。
自宅近くの施設であれば、面会に行くのも容易ですし体調不良や緊急時にいつでも駆けつけることができます。
そして、家族が通いやすければ近所の友人も通いやすいということです。友人の訪問は本人の活力になり、寂しい思いをしなくてすみます。
地域密着型サービスは、各施設の定員が少なく設定されています。家庭生活の延長線上にあるような施設を目標にしているため、スタッフや他の入居者との関係が近くアットホームな雰囲気のなかで過ごせます。
コミュニケーションがとりやすく、心配事や不安なことも相談しやすい環境でしょう。また、小さな変化にも気ついてもらえるなど、入居者が身体的にも精神的にも安心して過ごすことができます。
デメリットも確認しておきましょう。
地域密着型サービスは、市町村により整備の進め方に差があります。地域のニーズに応じたサービスを市町村ごとに展開していくという前提ではありますが、望んだ施設が必ず利用できるとは限りません。そのため、需要と供給のバランスが釣り合わない市町村も出ています。
地域密着型の老人ホームは同じ地域に住民票がなければ利用できません。たとえ隣町に魅力的な施設があったとしても利用できないのです。
希望の施設のある市町村へ転居する場合も、転居後一定期間経過しないと地域密着型サービスを利用できないといったデメリットがあります。転居を検討している方は、計画的に動けるよう、事前に対象市町村の窓口へ問い合わせておきましょう。
地域密着型サービスは、家族間や地域との繋がりを大切にするサービスであり、利用者や家族にとって大きなメリットがあります。
しかし一方では、まだまだ施設数や職員数が不足しており、地域間でサービスに差があるなど課題も抱えています。
高齢化が急速に進む日本では、今後ますます在宅や地域で高齢者を支えていこうという動きが強まることが予想されます。それに伴い、地域密着型サービスもより身近で利用しやすいサービスになっていくことが期待されます。