記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
グループホームでは、いったいどのくらいの費用が必要になるのでしょうか。認知症を持つ方の施設入居を検討するとき、候補に挙がることの多い施設がグループホームです。認知症でなければ入ることのできない施設のため、わからないことも多いかもしれません。
ここでは、初期費用や月額費用、介護保険、自治体の助成金制度などについて解説します。
費用の説明に入る前に、グループホームとはどんな施設なのかをまずは簡単に説明しておきます。 実は、グループホームは大きく2種類に分類されます。
共同生活援助(グループホーム)
心身に障害を持つ方に向けた施設
認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
認知症の高齢者に向けた施設
ここで説明するのは、認知症を持つ方のための施設である後者です。介護保険制度を利用することができるのもこちらのみとなります。
認知症高齢者グループホームの入居条件は、年齢が65歳以上であること。そして、要支援2・要介護1以上の認知症を持つ人が入居対象です。
また、グループホームは地域密着型の施設のため、施設と同じ地域内に住民票を持つことも入居のための条件となります。
老人ホームにはいくつかの種類がありますが、その中でもグループホームは認知症のケアに強みを持ちます。
グループホームの特徴は、一言で説明するなら「認知症の高齢者が、少人数で共同生活を行う場所」。洗濯や買い物などの家事をしながら、入居者同士が共同生活を送ることで、高齢者が持つ生活能力の維持や回復を図るという目的があります。
認知症となり一人暮らしあるいは家族との同居が難しくなった高齢者が、住み慣れた地域で他の入居者やスタッフたちと協力しながら、自分自身でできることを行って、おだやかに暮らしていく場所ともいえるでしょう。
さて、それでは本題のグループホームでかかる費用についてです。入居時や入居後の生活に、どのような費用がどれくらい必要になるのでしょうか。
グループホームでかかる料金を大きくわけると、入居時にかかる初期費用、月額費用(家賃などの生活費)、介護保険サービス費の3つとなります。
まずは、グループホーム入居時に必要となる初期費用を見てみましょう。
多くの場合、保証金や敷金といった費用が必要です。しかし、有料老人ホームの入居一時金のように何百万、何千万を超える高額な料金になることはほとんどありません。
おおむね10万~30万円程度となり、中には0円の施設もあります。グループホームは介護保険制度上の施設ですが、入居時にかかる初期費用については統一されているわけではありません。そのため、施設によって金額に開きがあります。
グループホームでかかる初期費用は、退去時の原状回復費としての役割であることがほとんどです。アパートなどを借りたときにかかる敷金と同じといえるでしょう。
退去時には、居室の清掃や修繕などにかかった料金、家賃などの滞納があった場合の金額が差し引かれて、残りは返金されます。
ただし、入居中に必要となった修繕にあてられたり、数年で償却し退去時には戻ってくるお金がゼロのこともあるので、初期費用の扱いに関しては、事前にしっかりと確認しておきましょう。
グループホームに入居したら、初期費用以外のお金も必要です。生活をしていくうえではさまざまな費用が発生するため、月々料金を支払わなければなりません。
月額費用のめやすは、およそ10万~15万円。実際には、介護サービスを利用するために必要な費用(介護保険の自己負担分)が加わりますので、これに要介護度に応じた金額が加わります。
月額費用は施設によって大きく前後するので、詳細は必ず各施設に問い合わせるようにしてください。 内訳は主に以下となります。
賃料として、毎月決まった額を支払います。
グループホームの居室は個室となり、家賃の目安としては5万円程度。ただし、地方圏では家賃が1万円前後の施設もあります。そのいっぽうで大都市圏では20万円を超えるような家賃を設定している施設もあり、地域による差異があります。
共益費にあたる施設管理費、水道光熱費が必要です。
施設管理費については、1万円台の施設が多い傾向です。ですが施設により差があり、高額の家賃が設定されている施設では高めになっていることもあります。
水道光熱費は1万円前後。施設によっては家賃や施設管理費に含まれていることもあるので、内訳は施設に確認しましょう。
意外に金額が大きくなりがちなのが食費です。グループホームでは1日3回の食事やおやつが提供されます。月あたりで4万円前後の設定をしている施設が多く、1日あたり1,300円程度です。
実際に用意された分の食費が請求されることになります。
その他として、レクリエーションの材料費や、日常生活のための費用もかかります。毎月少なからずかかる費用なので準備をしておく必要があるでしょう。
日常生活のための費用は、例えば、衣服や消耗品、趣味や娯楽にあてる費用、身だしなみを整えるための理美容費、医療費やおむつ代などです。施設に支払うものとは少し性質が異なる項目もありますが、一人ひとりで必要金額は大きく変わります。
現在持病などがなかったとしても、将来は医療費が大きくかかることも考えられます。できるだけ資金に余裕を持たせておくことも大切です。
グループホームにおける各月の利用料は、施設により大きな開きがあります。平均的なモデルで月額10万~15万円前後とはいえ、実際にはこの倍以上の料金がかかる施設もありますし、5万円程度で利用できる施設もあります。
この差はなぜ生まれるのでしょうか。考えられる理由は大きく3つあります。
・設備の充実度
・スタッフの人数
・立地
まずは、設備の充実度です。居室や共有スペースの広さ、設備の豪華さなどが月々の費用にも反映されます。
もうひとつ、グループホームの利用料を決める上で大きな要素となっているのがスタッフの人員配置です。介護施設でより充実したサービスを提供するためには、実際の業務にあたる職員を増やすことが不可欠といえます。
そうとすると、当然ながらその分の人件費が必要です。また、よりよいサービスを提供するためには、能力の高い人材を確保する必要がありますが、その場合の人件費は通常より高くなります。
月額費用に差が生じるもうひとつの大きな理由は、その立地です。
具体的には、都市部など土地代が高い地域のグループホームは家賃が高額になる傾向があります。格安な家賃の施設であれば地方圏であることがほとんどです。
施設を建設するためには、ある程度まとまった土地が必要になります。そのため、大都市圏では金額が大きくなる一方で、地方圏、特に山間部や離島などでは、非常に低い金額になることも珍しくありません。
グループホームの利用料の傾向は、設備や職員の配置による部分も大きくありますが、ある程度立地で決まってしまいます。
「それなら地価の安い地域で探そう」と考えるかもしれませんが、グループホームはその地域に住民票がある人でなければ入居できません。特別養護老人ホームや有料老人ホームのように、離れた地域で探すことはできないので注意しましょう。
グループホームに入居できるのは要支援2と要介護の人です。そのため多くの人は、食事、排せつ、移動の介助や、着替えなどの手伝いなどが必要になるため、入居後に何らかの介護サービスを受けることになります。
介護サービス費は要介護度によって変わりますが、ユニットの数によっても異なります。
介護サービス費の月額めやす
*自己負担1割・1単位10円の場合
この「ユニット」とは居室のタイプです。グループホームでは、最大9人の入居者が1つのユニットで共同生活を送ります。
食堂などの共有スペースを中央に配置し、各部屋がまわりを取り囲んでいるような造りで、共有スペースに入居者が集まりやすくなっているのが特徴です。
入居者同士だけではなく、スタッフとも顔なじみになりやすいため、環境の変化で悪化することもある認知症の症状にはよいとされています。
上の表のとおり、要介護度が高くなると介護サービス費も高くなり、ユニットの数は2よりも1のほうが高めとなります。
また、自己負担の割合は所得によって変わります。上記は1割負担の金額のため、2・3割負担に該当する方であればそれだけの負担額がかかりますのでご注意ください。
基本となる介護保険サービスは、上記の介護サービス費の料金となります。しかし、この基本以外のサービス提供がある場合には、「サービス加算」としてプラスでその分を支払う必要があります。
施設によってどのサービス加算がつくのかは異なりますし、入居者の状態によっても異なります。適用される加算については、あらかじめ確認しておきましょう。
認知症高齢者グループホームで提供される主なサービス加算は以下です。
初期加算(30単位/1日)
グループホームの入居から30日を限度にして適用されるものです。
この加算は、認知症の人が苦手とする環境の変化を和らげる効果があります。グループホーム入居中に1ヶ月以上入院した場合、退院後にも環境変化のためのケアを手厚く行うために初期加算が適用されることがあります。
認知症専門ケア加算(3もしくは4単位/1日)
この加算は認知症ケアに関する研修を受講済みの介護スタッフが配置されている、あるいは認知症ケアに関する情報が職員に対し共有されているなど、認知症ケアへの理解が深い施設であることを意味します。
グループホームは、認知症ケアに強みを持つ施設です。それに加え、認知症専門ケア加算のある施設では、より認知症を理解したサポートが受けられることを期待していいでしょう。
入居者側が負担する金額は、月で100円程度からとなります。
医療連携体制加算(39もしくは49、59単位/1日)
グループホームは認知症ケアには強いのですが、その一方で医療サポートは充実しているといえません。
環境の変化を苦手とする認知症の方がQOLを維持するためには、入居者の身体状況に困難が生じても、できるかぎり環境を変えないことが大きな意味を持ちます。そういった背景もあり、医療連携体制加算については、深化が進められています。
2018年度の制度改正では、手厚い連携体制を構築している施設を評価する項目が加えられました。具体的には、常勤換算で1名以上の看護職員を配置し、痰の吸引や胃ろうなどへの対応をしている施設が対象となります。単位数は詳細内容によって変わります。
看取り介護加算(72もしくは、144、680、1,280単位/1日)
この加算があれば、グループホームでも看取りを行うことが可能です。入居者にとっては、終の住み処にするという選択もできます。この加算は通常時には適用されず、医師により回復の見込みがなくなったと診断されてから認められるものです。
加算の単位数は、亡くなった日に1,280単位、亡くなる前日および前々日に680単位、亡くなる4日前から30日前の間は114単位、亡くなる31日前から45日前の間が72単位となります。看取り介護加算のある施設であれば、身体状態がある程度悪化しても、入居を継続できる可能性があるといえるでしょう。
以上では代表的なものや注目すべき加算について取り上げましたが、他にもさまざまな種類があります。
金額的に小さな加算でも積み上がると大きくなることもあるので、詳細に関してはしっかりと確認しておきましょう。
グループホームの生活では、施設のスタッフがさまざまなサポートをしてくれるので安心です。ですが、それ以外で問題になりやすいのがお金の管理ではないでしょうか。
認知症になると、お金の管理をすることが困難になることがあります。すると、本人が勝手に財産を処分してしまうといった想定外の出来事が起きることもありますし、詐欺などの被害に遭う可能性もあります。家族にとっても、何かと不安に感じる部分であることは間違いないでしょう。
しかし、本人のお金は本人のものです。家族であっても勝手にお金を引き出したりすることはできません。
それを解決する方法として、適切に財産を管理するために代理人を立てる制度があります。これを「成年後見制度」といいます。
お金の管理で安心できるというメリットがある反面、対価が必要です。
まず、成年後見人を申請する際には印紙代などが5千~1万円程度、鑑定が必要となる場合には5万円ほどがかかります。
また、後見人への報酬も必要です。報酬金額は本人の財産状況などから決まります。また本人のための仕事にかかった交通費などの費用も負担することになるので、成年後見制度の利用には毎月ある程度のお金が必要になります。よく検討してから利用するようにしましょう。
グループホームでかかる費用に対して、介護保険制度のように全国共通のものではありませんが、各自治体が独自で助成を行っていることがあります。
例えば、 神奈川県横浜市や新潟県上越市では、一人暮らしでの年間の収入が150万円以下などの条件を満たしている場合に、グループホームの家賃や食費などの一部に対する助成があります。
また、愛知県名古屋市で行っている支援では、本人の収入が80万円以下の場合に家賃や光熱費を月2万円を上限として支給しています。
このような助成制度は地域による有無や詳細な内容が異なるため、まずはお住まいの市町村にある役所に問い合わせてみるとよいでしょう。